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ー雪山ー14
望の独り言は悲しく虚しくお風呂場へと響くだけで、想いの人には届いていないだろう。 そして、その独り言もシャワーの音と共に下へと流れていくのだ。
望がお風呂から上がると、もう一階には誰もいない。 だからなのか、望は自分の部屋へと向かうしかない。
望が二階へと上がると、望の部屋から明かりが漏れていた。
そういうことは、誰かがこの部屋にいるという証拠だろう。
今頃の時間帯に望の部屋にいるのは、雄介しかいないはずだ。
まあ、望と一緒に住むようになってからは、望の部屋で雄介と二人でベッドで一緒に寝ているのだが、二人は先程喧嘩したばかりで、まさか雄介が自分の部屋にいるとは思わなかったのだろう。 望は逸る心を抑えながらも扉を開ける。
やはり扉を開けた先にいたのは雄介だった。
望は心の中で喜んだのも束の間。
今は雄介に声を掛ける言葉が見つからないのが現実だ。
雄介は望の部屋にあるパソコンを使ってネットをしていた。
きっと、さっき和也が言っていたスキー場や旅館などを検索しているのだろう。
それはいいのだが、雄介がパソコンに向かっている状態では本当に声が掛けづらい。
だが、今望が雄介に声を掛けなければ、もうチャンスはないのかもしれない。
望は意を決して雄介の側へと向かい、雄介の肩に手を掛ける。
そして、
「雄介……何を見てるんだ?」
望は動揺しないように、かなり勇気を持って雄介に声を掛けた。
「望には関係ないことや……」
そう冷たく言葉が返ってくる。
そんなに冷たく言葉が返ってくるとは思っていなかった望。
その言葉に望は目を見開く。
せっかく勇気を出して声を掛けたのに、まさかそんなに冷たく返されるとは思わなかったのだろう。
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