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ー雪山ー15
今の望は、雄介にそんなに冷たくされたくなかったのかもしれない。
きっと以前の望なら、雄介にそんなことをされたら布団に潜ってふて寝でもしていただろうが、今の望は違う。 本当に雄介のことを好きになったからこそ、一緒にいられる時間が貴重なことが分かっている。 だからこそ、望は折れずに雄介に声を掛けることを選んだのだ。
「あ、あのー、だからさ」
何か言葉を続けようと望は頑張ってみるのだが、なかなかこういうことに関して言葉が見つからない。
そんな望の様子に、雄介はパソコンデスクに肘を付き、手を顎に当ててチラリと望の様子を伺っている。
すると望の方は顔を俯け、あまり泣かない望なのだが今にも泣きそうな表情が目に入ってきた。
そんな姿の望に、さすがの雄介も望に触れようとするのだが、そこで止める。
ここは大人の駆け引きだろう。
ここで雄介が動いてしまえば、望はこの先の言葉を言えなくなってしまう。 だから敢えて雄介は望のことを無視することにしたらしい。
そう、今は望が雄介のために何かしようとしているのだから、そこは雄介が抑えるべきところだ。
望がきっと頭の中で何か考えている間、雄介はただひたすらパソコン画面に瞳を向け、何事もないようにマウスを動かし続ける。
雄介の瞳には確かに文字や画像は入ってきているのかもしれないが、頭には一切パソコンの画面や文字は入っていないのかもしれない。
せっかく和也に頼まれていることをしているのだが、これでは探している意味がないだろう。
とその時、雄介の後ろから声が聞こえてくる。
「……あ、あのさ……俺もお前のことが好きだ。 だから、あのな……」
望は顔を赤くしながら頰を掻くと、
「嫌なんだ……こう、なんて言うのかな? この貴重な時間を喧嘩したままでいるのはさ」
望の今の精一杯の気持ちを雄介は聞くと、雄介は椅子ごと望の方へ向き、望の手を両手で握り締める。
「今日のは俺の方も悪いんやって。 ただの嫉妬みたいなもんなんやし。 自己嫌悪とかもあって、俺が多分、望に当たってもうただけやから……スマン……俺の方も望のこと傷付けるようなことして」
そう言うと雄介は切なそうな顔をし、望の腰辺りを抱き締める。
そんな言葉を聞いて、いつもの望なら怒るか拗ねるかするのだが、今日の望はいつもとは違うのだから、
「あ、ああ、分かったよ……」
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