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ー雪山ー43

 和也の方はもうとっくに望の様子に気付いていたようだ。 だから、この場から早く立ち去りたいと思ったのだろう。 まだ裕実とは行き場所を決めていないのだが、それは二人きりになってから決めようと思っていたのかもしれない。  和也はこういうところ、敏感な人間だ。 人の心を読む。 その場の空気を読む。 それは看護師として働いている中で身につけたスキルなのかもしれない。 「スキー楽しみだよな? なあ、裕実……俺の格好良さを見せてやるからな」  和也は隣に座っている裕実の肩へと腕を回し言うのだ。 「ホント、和也さんって自信過剰ですよね? そこまで言っておいてできなかったらどうするんですかぁ?」 「俺の滑りを見たことがないから、そう言うんだろうな。 俺なんか上級者向けコースから軽く滑れるんだぜー。 まあ、大学の頃なんか毎年のように行ってたしな」 「任せろよ」と付け加えると、和也は自分の胸をドンっと叩く。  二人が盛り上がっている中、望はパンにかじりつきながらぼーっとしていた。  どうやら和也たちの会話に呆れているようだ。 「そいじゃあ! よろしく!」  和也はそう言うと食器をキッチンへと運び、洗い物を始める。 「あっ! 和也、ええよ! 後、俺たちでやっとくしー」 「こんくらい、気にすんな……自分たちの分は洗ったら帰るからさ」 「あ、ああ、ほな、よろしく」  和也にそこまで言われると逆に「もう、いいよ」とは言いづらく、とりあえず雄介はそのままご飯を口にする。  和也たちがキッチンにいる間、望と雄介の間にはなぜか会話がなかった。  雄介が何か望に話しかけようと思っても、今日の望は相当機嫌が悪いようだ。 本当に黙々とご飯を口にしているだけで、「話しかけてくるな」っていうオーラ的なものも凄い気がする。  雄介はその望の様子にため息を吐くと、最後の一口を口にした。 「んー、とりあえず、満足なんかな?」

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