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ー雪山ー47
雄介のことだ、望が怪我していると分かったら望の体を抱き上げてくるのは間違いない。 望はその抱き上げられ方に慣れていないせいか、本当にそれだけは恥ずかしかった。 それに、男が男に抱き上げられるなんてことは、本当に恥ずかしすぎる。
だが、雄介は望が思っていたことを実行に移す。 望のことを抱き上げると、やはりソファまで連れて行ってしまうのだ。
「雄介っ!」
顔を真っ赤にしながらも望は雄介の名前を言う。 きっとその言葉には「離せ」という意味も含まれているのだろう。 だが、雄介だってもう何年も望と一緒にいるのだから、望が言いたいことは分かっているようだ。
「怪我してんねんから……こういう時は素直に甘えたらええやんか。 それに、望はまだまだ男にしては軽い方なんやし、大丈夫やって……」
そう雄介は望に向かって微笑むと、望のことをソファの上へと下ろす。
「ちょ、見せてみ」
「後は自分でやるから大丈夫だって言ってんだろ。 とりあえず、棚の上にある薬箱を持ってきてくれるだけでいいしさ」
「望が怪我した時くらい、俺に手当てさせてくれたってええやんか。 俺だって、かすり傷程度なら治療できるしな」
「いいって、自分でやるからさ。 その方が安全だし。 それよりも、床をさ」
「そこは後でやっておくし」
雄介はそう言うと、望に言われた通りに棚の上から救急箱を取って来てテーブルの上に置く。
そして、箱の中に入っているガーゼで血を拭い、次の瞬間には消毒液を手にしていた。 部屋の中は消毒液の匂いが漂う。
「ちょ、雄介、タンマ」
「……はぁ!?」
「やっぱり、自分でやるって」
そう言って急に雄介に向かって待ったをかける望。
「それって、まさか、他人の治療は平気やけど……自分のとなると苦手とかって言うんやないやろな?」
「いやぁ、そこはなんていうのかぁ?」
望はその雄介の質問に完全に雄介から視線を逸らして言ってしまっているので、雄介の言う通りなのであろう。
「それに、消毒液ってしみるだろ?」
「ほな、なおさら、俺がやった方がええんと違うの? 望がやったら、消毒液を付けなさそうやしな」
「ちょ、え? マジに勘弁」
「これだけは勘弁できへんな」
そう雄介はボソリと少し強い口調で言うと、望の足を押さえてしまうのだ。
「しみる時間は少しなんやから、ちょ、我慢してな」
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