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ー雪山ー61

「違うって……」 「何が違うんだ? 服まで脱がしといてさ」 「だって、風邪の時には人肌で温めた方がええって言うねんやろ?」 確かにそうかもしれないが、恋人同士だと意識してしまうのは気のせいだろうか? 「ま、確かに言うけどさ」 「ホンマに今はもう何も望にはせぇへん、せやから、今は俺の言うこと聞いてくれへん?」  と雄介は望に向かって頭を下げてお願いしているようだ。  流石の望も、雄介にそこまでされると困ったような表情をしていた。  もう雄介の性格は知っているつもりだ。だから、雄介の姿を見て本気で望のことを心配しているということが手に取るように分かる。だから、そこは流石に断ることができなかった。 「……分かったよ」  そう望は仕方なしに答えたらしい。 「望、ありがとうな……」  そう一言だけ言うと、雄介は望が着ている服を本格的に脱がし始めた。  雄介は望の洋服を脱がし終えると、今度は自分の方も脱ぎ始めた。そして、その服をベッドの下へと落とし、望の体を抱き締めた。 「望、これで安心して寝てな」  雄介はそう言ってくれるが、これでは逆に安心して寝られるわけがない。  体を密着させているところから聞こえてくるのは、雄介の胸の鼓動だ。トクントクンと規則正しい鼓動が望の体に伝わってくる。この音が聞こえているということは、生きているという証拠。  雄介は今まで何度も死の縁を彷徨ってきたから、望からすれば安心できる音ではあるが、それでもこんなに恋人に密着されると、寝るどころではない気がする。  それでも頑張って瞳を閉じてみる望。すると、不思議なことに急に安心感の方が上回ったのか、その鼓動音に眠りに誘われたようだ。  この状況なら、雄介にも望の鼓動音が伝わっているのだろう。  今、望は雄介に後ろから抱き締められているのだから。

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