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ー雪山ー67

 雄介は困ったようにため息をつき、自分が作ってきたお粥を見つめる。  まだ湯気は立っているが、このままでは冷めてしまうのは時間の問題だろう。 「ほなら、俺が食べさせてあげたら食うか?」  雄介はいい案が思いついたかのように言うのだが、望の方は、 「んー」  と答えるだけだ。しかし、先程とは声のトーンが違うのは気のせいだろうか。 「ええよ。ほなら、起きて……そうやないと食べさせてあげることできへんやろ?」  そう嬉しそうに言う雄介だが、望はまだ布団の中から出てくる気配はなさそうだ。  それに対して、雄介は再びため息をつく。  そして、雄介は強行突破のようにゆっくりと布団を剥ぐ。こうでもしないと望にお粥を食べさせることができないと思ったのだろう。  雄介が布団を剥ぐと、猫のように体を丸めて雄介を見上げる望の姿があった。  望は熱のせいだろうか、頬を紅潮させ、瞳までも潤ませている。その姿はまるで望が雄介を誘っているかのように見える。しかし今はそれどころではない。  雄介は頭を振って気持ちを切り替えると、望の体を抱き起こす。 「もう、これしかないやろ? ちゃんと飯、一口だけでもええから食うてな……」  今度は子供でもあやすような口調で言う雄介。そしてテーブルの上に置いておいたお盆を膝の上に乗せる。  すると、そのテーブルの上に置いてあったのは望の眼鏡だ。 「望……眼鏡は要らんのか?」 「とりあえずは、必要ねぇよ」  望はいつものようにぶっきら棒に答える。  雄介は「望がそう言うんやったらええか」と納得すると、テーブルの反対側に来て、 「ほな、食べるか?」  その雄介の言葉に、望は仕方なさそうにも嬉しそうにも見える表情で頷く。  その望の行動に、雄介は笑顔を向けて、今の望を本当に子供扱いするかのように頭をポンポンと撫でる。

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