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ー雪山ー68

 雄介はベッドの端に座って、お粥をスプーンで掬うと、望の口元へ運ぶ。 「あーん……」  望は、恥ずかしさのせいか熱のせいか分からないが、顔を赤くしながら口を開け、雄介が掬ってくれたお粥を口にする。  その望の行動に、雄介は満足そうな笑みを浮かべる。  望は、あーだこーだと雄介に背中を押されるようにして、やっとお粥を口にする。そして、甘えるように雄介の背中に寄りかかる。  雄介は、その一瞬、何が起きたのか分からなかったようだが、望が寄りかかってきただけだと気づくと微笑む。  いつもは大変な仕事をしているのだが、こういう時間は不安から解放され、安心できるような気がする。  雄介にとっても、恋人と一緒にいられるこの瞬間が幸せな時間なのだろう。 「望、もう一口いこうか?」  その雄介の言葉に、望は少しだけ体を雄介の方に向ける。  今は望の行動だけだったが、その仕草で雄介には望が何を言いたいのかが伝わったようだ。再びスプーンにお粥を掬い、望の口元へ運んでいく。  それはまるで親鳥が雛鳥にご飯をあげているような感じかもしれない。  しかも、望は恥ずかしさからか瞳を閉じて、雄介がくれるのを待っている。  その望の行動に、雄介はクスリと笑う。  望は口にお粥を含むと、再び雄介の背中に寄りかかり、口をモグモグとさせながらお粥を食べていた。 「三口目いくか?」  雄介はそう言うが、体調が悪い時は食べ物をあまり受け付けないのか、望はその雄介の問いに首を振っていた。

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