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ー雪山ー107
やっぱり、今日の望はおかしい。いつもの望であれば、完全に雄介のことが好きだから、「当たり前じゃねぇか……今はもう、俺はお前に抱かれる気なんてないんだからな」と言ってくると思ったのだが、今日の望は明らかに何かが違う。
見た目ではない。中身の方が違うということだ。
「望……?」
和也は信号で止まると、覗き込むようにして望の表情を伺う。
「なんだよ」
「大丈夫か?」
「何がだ?」
「こう、なんていうのかな? 今日の望って何か変な気がしてさ」
「そうか? 俺の方は至って普通だって思ってるんだけどな」
望は和也から視線を外し、窓の外へと目を移す。
「そうなのかな?」
和也は意味ありげに言いながら、信号が青になるとアクセルを踏んで車を発進させる。
「その言葉には何か意味がありそうだな?」
「さすが望……分かってんじゃん」
「……で、何が分かったんだよ」
「ん? 朝、望が言っていたこと、本当だったんだなぁってな。それに、また、望さぁ、熱が上がってきてるんじゃねぇのか? 昼間は大丈夫だったみたいだけど、夜になって熱が出てきたって感じになってきたみたいだぞ」
和也はそう言うと、
「とりあえず、俺の家に行ったら飯食って薬飲んで、直ぐにでも休んだらいいさ。確かに雄介の言う通り、今日は俺に望のこと頼んでおいてくれて良かったのかもな。だってさ、熱出したままで運転なんてさせられねぇだろ?」
「まぁな。そこは雄介のおかげでもあるのかな? そうそう、久しぶりに和也と二人きりにさせてくれたのはさ」
望はそう言って、和也に答えになっていないようなことを返す。
そして、何かを思い出したのか、上着のポケットから携帯を取り出して、
「とりあえずさ、雄介に一言言っておいた方がいいだろ? 『今日は和也の家に泊まってくる』ってな」
「確かにそうかもな。次の日帰ってきて、望がいる気配がなかったら、きっと雄介は焦るだろうしな」
「ああ、そういうこと」
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