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ー雪山ー106
「だから、気にしないようにしてたんだよ」
和也は望に向かって笑顔を見せると、リモコンで自分の車のロックを外し、車へと乗り込む。
「そこで、望がヘコむ必要はねぇんじゃねぇのか? とりあえず、早く乗ってくれよ」
「あ、ああ……ゴメン!」
望は慌てたように言うと、和也の車の助手席に乗り込む。
その二人の姿を職員玄関から見ていた人物がいた。その人物は和也と喧嘩中であり、その二人の姿を見てムッとし、視線を逸らして自分の家へと帰って行く。
その事を知らない和也は、車を駐車場から出し、さっき望に言った通りにスーパーへと向かって走り出す。
「しかし、久しぶりだなぁ、こうやって望とプライベートを一緒に過ごすなんてさ」
「ああ、そうだな」
望は車外に流れる景色を見ながら返事をする。
「昔はよく、仕事が終わってから遊んでたのにな」
「ああ、それで、よくお前の家に泊まってたよな……で、酒とかも一緒に呑んでたし」
「そうそう! あん時は俺はさ、望の事が好きだったから、望に誘われるの嬉しかったんだよなぁ」
「へぇー、そうかぁ。あー、そうだったんだよなぁ。和也は俺の事好きだったんだっけ」
望は急に思い出したかのように言っているが、その言葉には何か意味がありそうに感じられる。だけど今の和也にはその意味が分からないようで、首を傾げている。普段の望からしてみると言わないようなことを言っているからだ。
「まぁな。今はもう俺は裕実しか見えてないけどさ。ま、だから、安心してくれよ。今の望には手を出す気なんて毛頭ないんだからよ」
和也はケラケラと笑いながら、望の様子が変だと気付き、その様子を伺っている。
「そうなのかぁ。ま、いいや……」
望はなんだか残念そうに聞こえるが、それは気のせいだろうか。そんな望に和也は目をパチクリとさせたのだから。
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