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ー雪山ー115

「さっきから、お前さぁ、言ってることが意外なんだけど? 俺から何を聞き出したいわけ?」 「ん? そうか? 俺は別に普通のことを聞いてるって思ってるんだけど」 「だから、それが普通じゃないって感じがするんですけど。だってさ、いつもの望だったら、そういう恋愛話とかって苦手じゃんか」 「別にー、今は雄介と俺はラブラブな関係なんだからいいんじゃねぇの?」  そう言う望に、和也は吹き出しそうになっていた。  やっぱり望の様子がおかしい。今の望は、本当に普段は言わないようなことを言っている。それに、例え雄介と恋人同士の関係であっても、今までそんなことを口にしたことはなかったような気がするからだ。  雄介と望が付き合い出してから、望という人物は世で言われているツンデレタイプで、雄介の前なら兎も角、少なくとも和也の前ではそんなことを言ったことがないはずだ。 「ま、いいや……」  和也はそう言うと、正面を向き車の運転を再開する。  家までは後少しなのだけど、スーパーの前は大通りで、今は帰宅の時間帯と重なってしまったのか渋滞になっていた。  しかもスーパーを出てすぐに何又にも分かれている道がある。信号待ちと渋滞が重なって、車がなかなか進まない。  会話がなくなった車内で、和也は再び望の方に視線を向けると、また望は何やら考えているようだ。  不思議に思いながらも、和也は朝望が言っていたことを思い出す。  昨日の夜は熱を出して雄介のことを望から誘ってたとか。でも今日の朝には熱がなかったから仕事に来たとか。もしかして、その望の謎の熱というのは夜になると出るとか。  風邪を引いた時なんか特にそうなのかもしれない。昼間は案外調子が良くても夜になると熱をぶり返すってことがある。  和也はそう思うと息を吐き、信号が青に変わったところで再びアクセルを踏む。  すぐそこの信号を左に曲がれば、もう和也が住むマンションは目の前だ。  あの後、望との会話がないまま、和也は自分のマンションへと着いていた。  まぁ、スーパーからマンションまでの距離がそんなになかったのだから、会話がなかったからと言って気にするようなところではないのかもしれない。

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