「怒るなよ。お前、俺にさっき言ってくれただろ？　『どんな和也さんでも受け入れる』ってな……だから、今はわざと意地悪な和也さんになってるんだけど？　だから、裕実の口から言って」 　そう和也は甘く囁くように裕実の耳元で言った。 　一瞬、頬を膨らませた裕実だったが、その和也の言葉で力を抜き、 「分かりましたよ」 　そう言って裕実は微笑むと、 「キスしてください。和也さん……」 「ああ、分かった……」 　そう和也は素直に裕実の言葉を受け入れ、片方の腕で裕実の頭を支えると、自分の方向へ向かせて唇を重ねた。 「これで、仲直りですね」 「ああ……」 　和也は再び裕実に笑顔を向けると、 「とりあえず、のぼせる前に出るか？」 「はい！」 　相変わらずの裕実からの可愛い返事に、和也はまた裕実の頭をポンポンと撫でた。特に合図もないのにも関わらず、裕実は先に浴槽から立ち上がって、お風呂場から上がった。 「あー、和也さん？」 　裕実はバスタオルで体を拭きながら、和也に振り向く。 「んー？」 「出たら、足の裏……治療しますからね。足の裏、痛くないんですか？」 「今は、もう少しだけってところかな？」 「なら、安心しました」 　裕実は体を完全に拭き終えると、着替えて先にソファへ向かった。 「和也さん……もう、薬箱用意してあるんじゃないんですかー？」 　テーブルの上に置いてある薬箱を見て、独り言のように言う裕実。 　裕実の後に続いて和也も体を拭き、着替えて裕実の元へと向かった。 「和也さん……足の裏、見せてくださいよ」 「ん？　あ、ああ……」 　ソファの上で向き合って座る二人。和也はまず右側の足を裕実に差し出す。 「僕の膝の上に乗せてくれると助かります。そうじゃないと見えませんからね」 「ああ、おう……」 　何だか、よくわからないが、医者に怪我を見せるより、恋人に怪我の状態を見せる方が恥ずかしく感じるのは気のせいだろうか。例え、それが看護師であってもだ。 「和也さん！」 　そう怒ったように低い声で言う裕実。 「な、なんだよー。いきなり……何怒ってんだ？」 「痛くないっていうのは嘘なんじゃないんですか！？」 「ん？　んー……」