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ー雪山ー152

「話を誤魔化さないでくださいよ! そうやって、自分の立場が危うくなると和也さんって話を変える癖ありますよね? とりあえず、それは後で話しますから、今は僕の質問の方を答えてくれませんか?」  そう裕実の方は和也のことを真剣な瞳で見上げる。 「だからそれはだな……力づくでも望のことを退けて……」 「その時、そんな仕草見受けられませんでしたけど……」 「いや、俺の方はマジで望のことを退けようとしてたんだからな! でも、何でかその時に限って望の力がすごかったっていうのかな? マジで、この俺が危険だなーって思ったくらいにな。 それに重力の関係上、下にいる方が不利ってか力がないっていうのかな? 上の方が有利だってことだ。 だから、裕実にはそういう風に見えてしまったのかもしれねぇんだけどさ。 俺の方はあれでもかなりの力で望のことを退けようとしてたんだけど、やっぱり、俺が下だった関係上、力が出なかったってことなのかな?」 「確かに一瞬はそうでしたけど、その後、和也さんはすぐに僕のこと追いかけて来ませんでした? じゃあ、和也さんがそういう風に言っているのなら、何で、和也さんはあの時、上にいる望さん以上の力が出たんでしょうか? ……で、僕のこと追いかけることが出来たんですか?」  和也はその裕実の質問に鼻で笑うと後部座席の方へと背中を預ける。 「馬鹿か……。 お前って、そこまで頭の回転が速いのに、やっぱ、どっか抜けてる所があるんだよな? 冷静になって考えてみてくれよ。 どうして、あの時俺は望から抜けられた? っていうのをさ」  和也は今度は逆に裕実に向かって質問を投げかける。 「とりあえず、望と俺の力はほぼ互角だろうよ。 だけど、望の方が上から力を入れているんだから、確実に俺の方が望より力はないと思われる。 でも、裕実が来てからは抜けることが出来た。 どうだ? 答えは簡単だろ?」  今まで押され気味だった和也だったのだが、余裕を持ったのであろう裕実の方へと笑顔を向ける。 「こんな簡単な答え出ないのか?」 「く、悔しいけど……僕には分かりません」  和也は裕実の頭をくしゃくしゃと撫でると、 「望よりお前の方が好きだからに決まってるだろ? 俺がまだ望のことが好きなら、お前のこと追いかけたりもしねぇだろうし、そもそも、望と二人きりになれたっていうんだったら、あの状況だったら、きっと、望と俺はヤってたんじゃねぇのか? しかし、裕実があの時来なかったら望とのベッドの上でのあの攻防戦はいつまででも続く所だったんだぜ。 裕実が来てくれたから、俺の方は愛のパワーで望から抜け出すことが出来たんじゃねぇのかな?」  やっと、あの時の誤解が完全に解けたのかもしれない。 裕実の方も和也にいっぱい質問して納得したのであろう。 和也のことを抱きしめるのだ。

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