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ー雪山ー151

「ほら! やっぱり! 自信無さそうじゃないんですかー? 人間って一番好きな人のことっていうのは話してしまうんですからね」  そう裕実の言葉は完全に人間の心理を突いている。  和也と裕実の会話を聞いている雄介と望。雄介は今まで大人しく二人の会話を聞いていたが、丁度会話が切れたところで、 「和也……それはホンマのことなんか?」  と低い声で和也に問う。 「……ホントじゃねぇよ。こんなのデタラメに決まってるじゃねぇか……!……?」  和也は雄介に向かいそう言うが、隣にいる裕実から痛いほどの視線を感じる。裕実は和也の言葉に対して睨み上げている。 「和也さん……僕がさっき言っていたことは嘘だと言うんですね?」  と切なそうに下を向いて言う裕実。 「そ、そういう意味で俺は言ってねぇんだよ。とりあえず、今は、俺の方は裕実だけしか見てねぇんだからよ。そこはマジに信じてくれ! それに、あの時は裕実も雄介もいなくて誰かに相談できる状況でもなかったしな。自分自身どうしたらいいのか? っていうのが分からなかったっていうのかな? でも、先週のは完全に未遂だろうが……それに、俺はあの時、望のことを見捨てて、裕実のことを追いかけて行っただろ?」 「……未遂って? じゃあ、もし僕があの状況で和也の家に入って行ってなかったら? もしかしたら、未遂で終わらなかったかもしれなかったんじゃないんでしょうか?」  本当に裕実という人間は敵に回すものではないと和也は思ったかもしれない。  裕実という人物は和也以上に頭の回転がいいのかもしれない。そういう風に質問してくる裕実に和也はたじたじだ。  確かに、あの時、裕実が部屋に来なかったら!? 和也はどうしていたのであろうか? 今、裕実にそう質問されて、和也は考えてもみなかったことに気づく。  和也は本気で瞳を宙に浮かせて今の裕実の質問を考える。 「和也さん! そこ、今、そんなに真剣になって考えるところですか!? ってか、考えることなんかあるんですか? 普通ならそんなこと、簡単に答えが出てくるもんなんじゃないんでしょうか?」  質問攻めに遭っている和也。その時、和也はふと疑問に思ったことが浮かび、裕実の方に視線を向けると、 「……ってか、何で、あの時、お前は家に来たんだ?」

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