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ー雪山ー150

「今の望の顔見れば分かるだろ? とりあえず、雄介だって、あの時のこと覚えてるだろうしな。そう! その時の望というのは望から襲ってきたって訳だ。それを聞いて、俺はもしかしたら!? って思ったんだよ。望のこと、抱いたら記憶が戻るんじゃないかと思ってさ。そん時は肝心なお前いなかった。ほら、レスキュー隊の訓練でいなかった訳じゃねぇか。だから、仕方なく俺が望のことを抱いたら記憶の方は戻ったみたいなんだよな。まぁ、全てが終わってからだったのか途中から覚めていたのか? っていうのは分からなかったんだけどさ。俺が望のことを抱いて、終わった後だったかな? 望がな『和也? あれ? 雄介じゃなかったのか?』って言ってた位だからな。とりあえず、記憶戻ったのか? って望に確かめた後に、その場で望にはちゃんと説明はしたんだけどさ。それで、その後、雄介に謝ろうとしてたら、疲れてそうだったから言いづらかったっていうのかな? せめて、雄介が帰って来てから何度も言おうと思ったんだけど……なんかこう言い出せないっていうのか、きっかけがなかったから話せなかったっていうのか。確かに、こんなに日にちが経ってから言うのは卑怯っていうのか、言い訳みたいになっちまったけどさ」  今度、その和也の言葉に雄介の方が息を吐くと、 「まぁ、そういうことやったんなら、今回のことは仕方ないな。そう、まぁ、あん時の俺はもう望から逃げるようにして和也に望のことを預けてまでレスキュー隊の訓練の方に行ってまった訳やしな。せやから、そこは仕方ないっていうんかな?」  そう雄介の方は自分も悪かったということもあって特に和也に怒る訳でもなく、そこに和也はホッとしていたのだが、どうやら雄介よりも厄介なのは裕実の方らしい。  裕実の方はその話を聞いて頬を膨らませてまで顔を俯けてしまっていたのだから。  和也は裕実の方に視線を向けると、 「これはな……あくまで、裕実と付き合う前の話であって、今の俺は裕実しか見てないから大丈夫だって……」  そう和也は裕実に説明するのだが、 「やっぱりー、和也さんって、僕なんかより、望さんの方が好きなんでしょう? そうなんですよね! だって、前から僕は感じてましたもん! いつも二人で話す時なんか望さんの話ばっかしてましたもん……」 「それはなぁ、俺は望といつも一緒にいるから、そうなっちまうだけで……」  そう何でか自信が無さそうに言う和也。

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