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ー雪山ー169

 その二人の会話に口を挟みに行ったのは望だ。 「お前らなぁ、食事の前にそんな会話をしてんじゃねぇよ。美味しい食事も不味くなるだろうが」  いきなり和也や雄介の後ろに現れた望に、和也や雄介はその気配に気付いて声がした方へと顔を向ける。 「……望?」 「なんだよー。そんなにびっくりしたような顔しなくてもいいだろうが……。俺がここに来ちゃ悪いのか? あのなー、家とは違うんだぞ。お前らの会話が俺たちがいる所まで聞こえてきてるんだっつーの! 少しは恥を知れ! 恥を……!」  望は言いたいことだけ言うと、さっきいたソファへと戻ってくる。そして再び息を吐く。 「流石は望さんですね。あの二人を黙らせる術を知っているみたいですしね」 「基本的にアイツらは単純だからな」 「早く僕も望さんみたいになりたいですよ。そしたら、もっと会話が弾むじゃないですかー?」  そう何故か裕実は意味ありげに言っている。  そこで再び望は裕実のことを侮れないと思ったのかもしれない。とりあえず裕実という人物は結構、警戒しなければならないのかもしれない。なんかこう自然に会話をしていても心の中を探っているような気がするからだ。それは望の親父である裕二が見つけてきた子ということなのだろう。  裕実という人物は、あの震災の中で病院が戦場化している所に飛び込んできているのにも関わらず、病院での処置や行動が早いと言われている望についてきていたのだから凄い実力者でもあるということだ。だが問題なのはドジの方かもしれない。  しかも望について来られた看護師は和也だけで、その和也にも匹敵するようなスピードなどを持っていたのだから。それに裕実は和也よりも一つ年下で、まだまだこれから伸びていく人間なのかもしれない。 「そういやさぁ、お前って、俺の親父にウチの病院に来ないか? って誘われたんだろ? その前はどこに居たんだ?」 「え?」  いきなり望にその部分を振られて体が固まる裕実。そして望のことを目をぱちくりさせながら見上げている。 「……あ、えーと……アメリカにいましたよ。望さんのお父様と同じチームで働いていましたけど」

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