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ー雪山ー196
外の方は相変わらず吹雪いているようで、風がガラス窓を叩く音がひっきりなしに響き渡っている。
「そうだー、和也ー!」
と珍しくこの空気を打破してくれたのは望だ。
「ん? 何?」
「お前、この前の引き抜きの話はどうするんだ?」
そういきなり望の口から出てきた言葉に、和也は勿論、裕実も雄介も望のことを見上げる。
「望さん……それって、どういうことですか!?」
その言葉に一番最初に食いついてきたのは裕実だ。そして興奮気味に聞く。
「あー、この話、裕実も雄介も知らなかったんだっけ? この前さぁ」
そう望は、この前あった和也が新城に引き抜きの話をし始める。
「和也さん! 何でそんな大事な話、今まで僕にしてくれなかったんですか!?」
望が話終えたとほぼ同時に声を荒らげたのは裕実だ。
「べ、別に……黙っておいたって訳じゃねぇよ……だって、俺はそんな話なんかスッカリ忘れてた位だしな。それに、新城が働いている病院なんかにさらさら行く気なんかねぇしな……。だって、俺的には望が働いている病院で満足してるしな。それに、アイツ、あの時点で多少は俺のこと諦めてたみたいだし、全然、気にしてなかったっていうのかな?」
「和也ー、そうは言うけどさ、確かに、あそこでアイツは和也のことは諦めていたのかもしれねぇけど、今度またいつ仕掛けてくるか分からないぞ」
そう、そこまでハッキリと言う望。
一方、きっと和也の中ではその話をして欲しくなかったと思っているのかもしれない。そして、このことについては自分の問題であって和也自身で解決するつもりでいたのだから。
「そんな話すんなよ……って顔してるよな? じゃあ、どうして恋人である裕実にはこの話しなかったんだ?」
そう静かに突っ込む望なのだが、こういつも以上に威圧感みたいなのがあるのはどうしてなんだろうか。
「そ、それはさっき言っただろ? それと、裕実を心配させたくなかっただけだしな……」
「じゃあ、和也はこの問題を一人で解決させようとしてたって訳だ。そのことを恋人には話していないって、一体どういうことなんだろうな? となると、和也は俺たちや裕実のこと信用してないってことにならないか?」
その望の言葉に和也は言葉を詰まらせる。そう望が言っていることが正しいからなのかもしれない。人間というのは、そういう風に口喧嘩になった時に言い返せなくなった時というのは、相手の方が正しいことを言っているということだから黙ってしまうのだ。
そして和也的にはもう一つ気付いたことがあったのであろう。そう、自分一人で解決しようとしていたということだ。仲間や恋人のことを信じていない自分がいたということだ。
「ゴメン……別に俺はお前等を信じてないって訳じゃねぇんだ。これは俺だけの問題だったから、俺、この問題だけは自分一人で解決したかっただけなんだからさ。ただ、それだけだ」
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