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ー雪山ー198

 そう嫌味っぽく言う望。望は、たとえ雄介が大阪に行ったとしても付いていかなかった。それは患者さんやスタッフのことを考えてのことでもあるが、望にはもう一つ、動けない理由があったのかもしれない。  望は春坂病院の跡継ぎでもあるため、東京から離れられないのだ。  今度は裕実も望に対して言い返せないでいる。  望が言っていることが正しいので、裕実は言い返せないのだろう。確かに、裕実は望に急に意見を振られた。だが、逆に言えば、突然の質問だったからこそ考えもせずに答えたため、心の中ではそう思っているのだろう。 「まぁ、確かにそこは望の言う通りだな。裕実……お前が俺のことを十分好きだってことは分かってるんだけどさ、だけど、俺たちがしている仕事ってのは、プライベートのことは二の次、三の次くらいのことだろ?だから、まずは患者さんのことを考えないとな。だから、俺はあの時、すぐに断った……まぁ、そもそも他の病院で働く気はなかったってのもあるんだけどさ。確かに、給料や待遇は良いって言ってたけど、でも、俺的にはそこじゃねぇんだよ。金でもないし、待遇でもない、ホント、そこは自分でも分からないんだけどな」  和也はそこまで言うとひと呼吸置き、 「それにさ、今、この状態で病院で働いているスタッフが二人も消えたらどうなると思う? シフトも狂うだろ? そしたら、残されたスタッフに負担がかかっちまうし、患者さんを診る人間が減ったら、今まで以上に死亡率が増えちまったらどうするんだよ」 「はい……確かにそうですよね。なら、やっぱり和也さんは病院に残るべきですよ!」 「当たり前じゃねぇか! マジで春坂病院から離れるわけがねぇだろ? 色々と良い病院なんだからよ」  和也が笑顔でそう言うと、裕実も笑顔で、 「はい! そうですよね」  と言うのだが、裕実は急に首を傾げて、

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