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ー雪山ー200

 今までふざけていた和也はどこへやら、真剣な瞳で望の瞳に視線を合わせるのだ。  その和也の言葉で、さすがに望の方も言ってはいけないことだったのかと反省しているのかもしれない。 「そっか……そういうことなら、別に話さなくてもいいぜ。俺の方ももうこれ以上は聞こうとは思わないしな」  望はもう仕方なしに、その話については言わないようにしたらしいのだが、 「引っかかったー! 引っかかったー! なるほどな! こうすれば望を騙すことができるんだー!」  と一人納得している和也だったのだが、そう言われてしまっている望の方は穏やかではない。人が親切を無駄にしてくれたとでも言うのであろうか。 「お前なー! また、やったな! ふざけんじゃねぇぞっ!」  そう望はフッと立ち上がって、また和也のことを小突こうとしたのだが、それを阻止しようと裕実が望の前へと立ちはだかる。 「望さん! そんなに和也のこと、いじめないでくださいよ。僕の大事な恋人なんですからね!」  裕実は望のことを睨むように見上げる。 「裕実……?」  いきなりそんな行動に出た裕実に、少し驚いたような口調で言う和也。だが、和也は次の瞬間にはなぜか大笑いをしている。 「裕実は知らないのかもしれねぇけど、これが、俺たち流のスキンシップっていうのかな? 俺的には望とのおふざけって感じなんだけどな。とりあえず、望の方はどう思っているのかは分からないけどさ、でも、俺はふざけているだけとしか思ってないんだけど」  和也はそう言いながら、今和也の前に来ている裕実の体を後ろから抱きしめる。  そんな二人の姿を見て、望はため息をつくと、ゆっくりその場に腰を下ろすのだ。 「まぁ、そういうことだな」  そう望は和也から視線を外しているものの、呟くように言うのだった。 「でも、望さん! もう、和也さんのこと、いじめないでくださいね」  と念を押すように言う裕実。 「分かったって……」  と望はつまらなそうに答える。 「ホンマ、アイツらはラブラブやねんなぁ」  そう雄介はクスクスと笑いながら望のことを見上げる。 「みたいだな……」

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