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ー波乱ー63

 雄介はその裕実からの告白を聞いて腕を組み考え始める。 「せやけどなぁ、んー」 「僕の為に悩んでくれているのは嬉しいのですが……ん……雄介さんまで苦しまなくてもいいんですよ。 僕と和也さんの問題ですからね……っ。 和也さん……もしかしたら、僕の事を試しているのかもしれませんしね。 何となくですが……そう思う気がするんです……ん……和也さんってそういうところには長けているとこありますからね」 「確かになぁ、アイツってそういうとこは前からあるしなぁ、普通に会話しておってもこっちが何か探られているっていう感じはあるわな」  雄介はそう言いながら裕実の方へと笑顔を向ける。 「ですよねー……僕はそこに気づいたんですけど……っ……そういうとこ……はぁ……はぁ……和也さんって怖いんですよね」  そうふざけて言っているようにも思える裕実なのだが、やはり苦しそうにしか見えない。 どれだけ我慢しながら雄介と会話をしているのであろうか? 雄介は心配そうな表情を浮かべながら裕実の事を見つめていた。  一応、和也に任せられているのだから、もしもって時には裕実の事をイかせて上げなければならないのだから。 「なぁー、何で、お前媚薬なんか飲まされたん?」 「それですか!? さっき、和也さんには急いでたんで言えませんでしたが、あの患者さんの病室に入って行った時に突然、お尻を撫でられて……それから、いきなり媚薬を飲まされてしまったのです」  本当はその事について思い出したくはなかったのか瞳に涙を溜めて雄介にはその涙を見せないようになのか反対側を向いて話始める。  その裕実の話に真面目に聞いている雄介。 「今の僕は和也さん以外に抱かれたくはなかったんですよ! なのに……っ……あんな知らない男に抱かれて……物凄く気持ち悪かったんですからね!」  裕実的にはもうその事について言うのが限界だったのであろうか? そのまま雄介の布団の中へと潜ってしまい最終的には涙声で訴えていた。  それで、やっと雄介の方も裕実の今の様子が分かったのであろう。 触れてはいけない事を言ってしまったという事に気付き、 「あー、ホンマ、スマン! 俺、何で裕実がその事について傷付いておった事に気付かなかったんやろ? 無神経な奴でスマンな……」  そう慌てたように言う雄介。 車椅子から頭を俯かせてしまっている。 「雄介さんは悪くないですよ……き、気にしないで……く、下さい……。 僕が無防備だったのが……っ……いけなかったんですから……」

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