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ー波乱ー73

「くすぐったい? 気持ちいいじゃなくて!?」  そう和也はいつもの自分を取り戻したのか、ふざけたように言うと、 「和也の意地悪っ!」  裕実はそう言うと頰を膨らませながらそっぽを向いてしまう。  そんな裕実の仕草が可愛かったのか和也はクスリとすると、 「ゴメン……ゴメン……お前があまりにも可愛いからさ、つい意地悪したくなっちまうんだよな」 「でも……」  そう裕実は一旦息を吐くと、 「そんな和也……僕は好きですからね……」 「ああ、俺も負けないくらい、お前の事が好きだからな」  二人は笑顔を見せ合うとクスクスとし始める。 「じゃあ、意地悪な事して……」  と和也が最後まで言い切らないうちに、 「嫌です! 今日は和也……優しくして下さいね」  そう裕実は和也の名前を確かめるかのように何度も口にしていた。 「ああ、分かった……今日はお前の言う通り……優しく……な……」  裕実はその和也の言葉に頭を頷かせるのだ。 「じゃあ、先ずは何をして欲しいんだ?」  そう今さっき約束したばかりなのに和也はそう意地悪な質問をするのだ。 「和也!」 「ああ……ゴメンな……つい……お前の可愛い顔見てると、意地悪したくなってきちまうんだよな……それは、本当にお前の事が好きだからなぁ、こう、なんでなのかな? 昔からそうだろ? 男って可愛い子を意地悪してくなるじゃねぇか」 「それは、和也だけでしょう?」  そこも頰を膨らませて言う裕実。 「でも、少なくとも俺は……裕実の事が本当に好きなんだからな」  そう言いながら和也は裕実の前髪を掻き上げると額へとキスをする。 「でも、今日は意地悪な事はしないって……約束したじゃないんですかぁ?」 「だな。 そこは俺の悪い癖だよな? じゃあ今日は俺のやり方についてきてくれるか?」 「分かりました。 和也にだったら、僕はついていきますからね」 「ああ、ありがとう……」  いつのまにかさっきまで大地を揺らしていた雷は止んで雨の方も止んできているようだ。  空は雲が切れてきて所々には星や月が見え隠れし始めていた。 そうだ今の和也達のように心の中にあった雲がなくなってきているようにも思える。  和也と望が利用している部屋のお風呂場では、ゆっくりと媚薬の効果は切れてきているのか裕実の声もやがていつもと変わらないような感じになってきていた。  今はもうこの二人の間に嘘も偽りもない。 だって今日はもうお互いの事を心の中から話し合ったのだから。 やっと上部だけの付き合いではなく本当の恋人になれたという所だろうか。   だからなのか和也は本当にもう愛しい裕実の中に挿れたくて仕方がないようなのだが、それとは逆にいつも以上に可愛がって上げたいという思いの方が上なのかもしれない。  そして今日の二人はいつも以上に興奮しているらしく、お互い確かめ合うように何度も名前やキスを繰り返す。

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