869 / 1491
ー波乱ー75
二人は幸せそうに朝の挨拶を交わすと和也のベッドから降りて望がもう来てソファで寝ている望の存在に気づくのだ。
「望……もう、来てたんだな。 とりあえず、お前は新城が来るまでに自分の部屋に戻っておいた方がいいんじゃねぇのか?」
「そうですよねー。 じゃあ和也は新城先生には気を付けて下さいね」
「ああ、分かってる。 今は本当に裕実っていう大切な人がいるんだ。 お前の事、悲しませないように気を付けるよ」
その和也の言葉に裕実は笑顔を向けると足早に部屋を出て行く。
それから和也はソファで寝ている望の事を体を揺らして起こすのだ。
今はもう和也は望には未練はない。 それは昨日ちゃんと裕実と恋人同士になったからだ。
だからもう望の事を意識せずに揺らしながら起こす。
「望ー! 朝だぞー! 起きろ! 新城が来ちまうぞー!」
それを言われたからなのであろうか? 望はソファの上に半身を起こすと辺りをキョロキョロと見渡す。
「早く起きないとアイツが来ちまうだろ?」
「ああ、そうだったな……」
「ここで寝てるのバレたらヤバくないか?」
「まぁな……」
望はまだ気だるい体を伸ばしながら着替える為にロッカールームへと向かうのだ。
和也の方も窓の外を眺めながら体を伸ばす。
本当に今日はいつもより清々しい気分になっているのは気のせいであろうか。
窓の外に広がっている青い空もそういう風に思わせてくれているのだろうが1番は裕実との恋仲が深まったからなのかもしれない。
「今日は一日頑張って、明日は裕実とデートするぞっ!」
その和也のでっかい独り言は部屋内のも響き渡り、きっとロッカールームにいる望にも聴こえていたのであろうが、そういう所気にしない望は突っ込んでは来ないだろう。
それから望が着替えて出て来ると今度は和也がロッカールームへと消えていく。
だが望の方はソファに座って頬んでいた。
和也には言わないのだが今の和也の言葉に望の方も何かを感じ取ったのであろう。 親友が幸せなら自分の方も幸せな気分になってくる。
和也は着替え終えると望の前にあるソファへと腰掛け、
「昨日のお前等はどうだったんだよー」
と和也の方は相変わらず望にそういう事について聞いてきているようだ。
「……そんな事、聞いて来なくても分かるだろ?」
ともだちにシェアしよう!