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ー波乱ー78
和也にそこまで言われると、確かにそうだ。プライベートなんか二の次。患者さんが第一に決まっている。ただし、今回のことについては、そんなことを分かっていても許せない。
望は拳を握ると自分の太腿を叩き、颯斗に向かって顔を上げる。
「一つだけお前に聞きたいことがある……!!」
望は奥歯を噛み締める。
「裕実じゃなくて……本宮さん……のことはどう思ってる!?」
「本宮さん……? 別に僕の方はどうも思ってはいないけどね……同僚としか思ってない、それくらいの人物かな?」
その颯斗の言葉に、望は安心したような表情をすると、望の後ろにいる和也の顔を見て再び和也に視線でアイコンタクトを送るのだが、和也の方は何を望にアイコンタクトされたのかが分からなかったらしく、目をパチクリとさせているだけだ。
「なら、裕実とお前を組ませる!」
そう宣言するかのように言う望。
「やっぱり……そう来ましたか。まぁ、それが一番安全だと思いますよ。僕の方はまったくもって本宮さんの方には興味ありませんからね。さて、お話はここまでにしておかないと、時間の方が無くなってしまいますよ」
「ああ……」
望はそう答えると、色々な物を手にして一階にある診察室の方へと向かう。
診察室に向かう途中、颯斗が前を歩き、望と和也がその後ろを歩きながら何かを話しているようだ。
「な……」
「言わなくても分かってる。今は裕実には手を出さないっていうアイツのことを信じるしかねぇだろ?」
「やっぱり、そうなのか!?」
「それしか、今はアイツからお前を守る方法はねぇってことなんだから、仕方ねぇだろ」
いつもに増して望の方はイライラしているのか、少し怒ったような口調で和也に向かって言う。
「お前は裕実の恋人なんだから、仕事が終わったら毎日聞くようにすればいいだろ? 今日、アイツに何かされなかったか? ってさ……今はそれしかないんだよ」
「あぁ! そっか! そうすりゃあ良かったんだ!」
「だから、今日のお前は冷静さを失っていたから、俺がフォローしてやってたんだろうが……」
「ゴメンな……望。望の言う通りだよな。今日の俺はどうかしちまってたわぁ。分かった……そうする……毎日、裕実にアイツのこと聞いてみることにするよ」
「ああ……」
やっと二人は落ち着いたのか、表情を仕事の顔へと戻し、診察室へと向かうのだ。
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