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ー波乱ー112

「本当にそれ、聞きたい?」 「はぁ!? ってことは、和也、何か知ってるのか?」 「んー、まぁな。 そのことは雄介も裕実も知ってることだしな。別に望に内緒にしておくつもりってわけじゃなかったんだけどよ」 「へ? ちょ、それはどういうことだ!?」 「んー……だからだなぁ、前にお前が記憶喪失になったことがあっただろ?」  その和也の言葉に、望は興味津々で話を聞いているように頷く。 「それの後遺症だと思うんだけどさ、お前は熱を出すと記憶をなくすみたいなんだよな。それと、いつも以上に積極的になるって雄介が言ってた。それで、前回の時は俺が望に襲われそうになったってわけ。記憶がない望の場合はさ、『誰でもいいから』って状態になるみたいだぜ」  和也がニヤケながら言うのに対し、望は顔を真っ赤にしている。  例え記憶喪失だとしても、「誰でもいいから」って和也のことまで襲っていたなんて、望にとっては思ってもみなかったことだったのだろう。 「それ、本当なんだよな?」  望はそっと顔を上げ、和也に尋ねる。  その会話に口を挟んできたのは、裕実だった。 「望さん! それは本当なんですからね! 僕がここに来た時、望さんは和也のことを押し倒していたくらいだったんですよ」  和也一人だけだと現実味が感じられなかったが、裕実までそう言ってきているのだから、そういうことなのだろう。いや、裕実だからこそ信じられるということなのかもしれない。和也が嘘をついているわけではないが、和也の日頃のおふざけが多すぎて、どれが真実でどれが冗談なのかが分からない時がある。だからこそ、裕実にそこまでハッキリと言われると信じざるを得ない。裕実は普段から嘘をついたり、ふざけたりすることがないからだ。 「だけど、どうやら私生活には問題ないみたいだし、俺たちの中にしまっておいた話だったんだけどな」 「そういうことかぁ」 「これで、前回のことが分かったか? それを裕実にたまたま見られて、俺たちの方が大変だったんだからな……本当に気をつけてくれよ」 「……って言われても、記憶喪失になっちまったら本当に記憶がないわけだろ? それに、記憶喪失の俺は見境なんてないわけだしな」 「それが、本当の望だったりしてー」  そう大笑いする和也に対して、望は顔を真っ赤にする。 「和也ー、望さんをからかうのはやめてくださいよー。望さんがかわいそうじゃないですかぁ」  裕実は、そう言って望をフォローした。 「分かってるんだけどなぁ。何でか望には、そう言っちまうんだよなぁ」  和也はいつもの表情に戻しながら、 「なんていうのか……からかってるってわけじゃねぇんだよ……真面目に言うより、ふざけた方が事実を受け入れやすいんじゃないかと思ってさ。それに真面目に言ったら、ダメージがあるかもしれねぇだろ?」

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