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ー波乱ー111

 望は和也のその言葉に目を丸くし、ため息を吐くと、 「お前の言う通りだ……本気で俺は雄介と別れようとは思ってないが、昨日のアイツの言葉を聞いて、なんかムカついたから。だから、アイツの頭を冷やすためにもそう言っちまったっていうだけで……」 「だよなぁ。あんなラブラブなのに、いきなり望から『別れよう』なんてこと言うはずねぇもんな……なら、まだ仲直りさせる方法はあるってわけだ」  最後はそう独り言のように呟くと、車をマンションの駐車場へと止めた。 「そこまで聞いちまうと、もう、聞くことはねぇんだけどな」 「……へ? じゃあ、和也は何か解決方法が見つかったのか?」 「まぁ、明日は雄介と約束してるから、まぁ、後は雄介の意見もちゃんと聞いてからだけどな」  和也はスッキリとした顔をしていたが、望はまだ浮かない顔をしている。 「まぁ、今日は家でゆっくりしていけよ。どうせ帰ったって、二人じゃ何も解決できないだろ? 俺たちと一緒にいれば、少しは気が紛れるかもしれないしさ」  全くもって和也の言う通りなのかもしれない。今、望が雄介のいる家に帰ったところで、一人で喧嘩を修復することは不可能だろう。なら、明日は和也と雄介が会うと言っているのだから、任せたほうがいいのかもしれない。  三人は和也の部屋に入ると、和也がご飯を作り終えるのを、テーブル近くにあるソファで待っていた。  望にとっては、和也の家に来るのは二回目のような気がするが、どうも前の記憶がないように思える。  こうして和也と二人きりで、和也が作ったご飯を食べたまでは覚えているものの、裕実がいつの間にか来ていて、この部屋にいたのは覚えているが、その間の記憶が全くない。  望は前回ここで何があったのかを、和也に聞いてみることにした。 「なぁ、和也……前回の時にさ、俺はここで何をしてたんだ? 今、ここに来たら思い出したっていうのか。ご飯をこの場所で食べたのは覚えてるんだけどさ、その後、喧嘩したと言っていた裕実がいつの間にかいたって記憶しか俺にはないんだよな」  和也はその望の言葉を聞いて、前回の記憶を思い出し、望をここに連れてきたのはまずったとでも思っているのかもしれない。  確かに、ここ最近、望は風邪を引いて熱を出すことはなかった。だから、雄介に望のことを託されることはなく、望もそれ以降ここには来ていなかった。  和也は観念したかのように、ご飯を持ってくると、床に座った。

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