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ー波乱ー110
そして、和也は運転席に座り、裕実を助手席に座らせ、望を後部座席に座らせた。
和也はみんながちゃんとシートベルトをしたのを確認すると、自分の家に向けて車を走らせる。
和也は、とりあえず裕実に今日あったことを聞き始めた。
「今日、新城には何もされなかったか?」
「はい! 今日も普通でしたよ……新城先生は確かに僕には興味がないようですしね。むしろ、新城先生と僕は普通の会話しかしませんでしたから」
「そっか……それなら良かった」
和也は裕実の言葉に安心すると、チラリとバックミラー越しに望の方へ視線を向けた。
「……で、望の方はどうなんだ? 朝、俺に言っていたことを話せよ。何で雄介に『別れよう……』って言ったんだ?」
そう望に話を振る和也だったが、やはり「別れよう」という言葉があったためか、裕実は目を丸くさせた。
「え? 何で望さんがそんなことを雄介さんに言ったんですか?」
裕実はそう和也に聞こうとしたが、和也は唇に人差し指を当てて、裕実には黙るように指示を出した。
それに気付いた裕実は、すぐに下を向いて黙った。
「ごめんな……今は望の話を聞きたいんだ。それに、俺も望からは『別れる』っていう理由を聞いていなかったしな。お前の質問には答えられないって感じだったんだよ」
そう言って、和也は裕実の頭を撫でながら正面へと視線を戻した。
望は流れる景色を眺めながらひと息吐くと、
「わかった……話すよ……」
そう言って、望は昨日雄介とあったことを和也と裕実に話し始めた。
「はぁ!? たったそれだけのことでお前は雄介に別れるって言ったのか!?」
「たったそれだけって言うなよ。俺たちにとっては重要な問題なんだからな! それに、そんな弱気の雄介は、雄介であって雄介じゃないような気がしたんだ。あとは、俺だけのために仕事を辞めるって言ったんだ……だから俺は『俺が仕事の邪魔になるなら別れる』って、思わず言っちまったんだよな」
「思わずってことは……本気で雄介と別れようとは思っていないってことだな」
言葉というのは、言い方によって意味が変わってくる。和也という人間は本当に人の言葉を、一語一句逃さずに聞いているようだ。たまにはふざけることもあるが、こういった真面目な話の時は、ちゃんと聞いているといった方がいいのかもしれない。
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