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ー波乱ー109

「ちょ、それってどういう意味だよ……雄介と喧嘩したっていうのは予想の範囲内だったけど、別れるっていうのは予想外だったぞ」 「それを説明すると長くなるんだよ」  望はそう言いながらパソコンの電源を落とし、立ち上がる。 「今は仕事だから、終わってから説明する」 「なら、今日は俺の家に来いよ。まぁ、裕実も一緒ってことになっちゃうけどさ……こういう話って、いろんな人の意見も聞いた方がいいだろ? それに、雄介と喧嘩したって言うんだったら、今日は家に帰りづらいだろうしな」 「確かにそうだな……まぁ、とりあえず、仕事が終わってからな」 「ああ、分かってる……」  そう言うと、和也は納得し、望の後に付いて部屋を出て行く。  それから、仕事を終えた望と和也は部屋へと戻る。和也は携帯を取り出し、雄介へとメールを送る。 『今日は望のことを預かる。明日はお前のことを預かることにするから、覚悟しておけ……』  と、和也が雄介にメールを送ると、すぐに雄介から返事があったようだ。 『分かった……』  と、その一言だけ書いてあった。きっと、雄介も覚悟していたことなのかもしれない。 「とりあえず、雄介には心配かけないようにメールはしておいたからな」 「ああ……」  望はそう軽く素っ気ない返事をすると、ロッカールームへと消えていく。  望が和也のメールが終わるまでソファにいたということは、少なからず望は雄介のことを気にしているということだろう。望は、雄介のことが嫌いになって「別れよう」と言ったわけではないようだ。もし本当に望が雄介のことを嫌いになって「別れよう」と言ったなら、和也が雄介にメールを送ることさえ拒むだろうから。  和也はその望の反応に少し安心したものの、今回の望と雄介が喧嘩した理由までは分かっていない。そこまで分かるのは超能力者ぐらいしかいないだろう。だから、望に話してもらおうと思っている。  暫くして望がロッカールームから出てくると、続いて和也もロッカールームへと向かう。  だが、和也はロッカールームに入った後、すぐに顔を出して、 「俺の家に行く時は俺の車でな。今の望を一人で運転させるわけにはいかないしさ」 「ああ、分かってる。俺もそのつもりだったからさ……」 「じゃ、決まりだな……」  和也はそう言うと再びロッカールームへと消えていく。  和也も着替え終えると、携帯で裕実を呼び出し、駐車場へと向かうのだ。

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