902 / 1491

ー波乱ー108

「みたいですね。望さん、目の下にクマ作っていたみたいでしたしね。昨日の夜は何か悩み事があって寝れなかったって感じでしたもんね」 「ああ、そういうことだ。とりあえず、俺たちもそろそろ行こうぜ。お前はいつも通り新城に警戒してくれよ。何かあったら、仕事終わった後に俺に報告するんだからな」 「分かってますよ。本当にもう、和也は心配性なんですからー!」 「それだけ、今はお前のこと、愛してるってことだろ?」  その和也の台詞に裕実は顔を赤くすると、 「和也っ! もう……」  そんな怒った顔も、和也からしてみたら可愛くて仕方がないのか、軽く裕実に向かって微笑むと、車の中から鞄を取り出し、 「俺は望からうまく話聞き出すからさ……」  和也は裕実の横に並ぶと、裕実の頭を軽く撫でて部屋の方へと向かうのだ。 「何か和也って凄いですよねー。どんな時にでも物事を冷静に分析する力があって……」 「大したことじゃねぇよ……お前にだって、そんな力があるってことは知ってるんだからな」  確か、このことについては和也は知らないと思っていたのだが、この口ぶりだと知っているようだ。 「俺が気付いてないとでも思っていたのか!? 俺のこと、舐めんじゃねぇぞ……」  そう和也は裕実の耳元で囁くと、自分の部屋へと入っていく。  そして和也は部屋へ入ると、鞄をロッカーの中へ入れ、着替えてソファへと腰を下ろす。 一方、望は机に向かって何かパソコンで作業をしているようだ。  和也は望の行動をよく知っている。今日はまだパソコンを使って作業することなんか無いはずだ。ということは、和也と話さないようにパソコンで作業をしているフリをしているのであろう。  和也は突然、大きな声を出し、何かを言い始める。 「最初に言っておくけど、これはあくまで俺の独り言だから、聞く聞かないはお前の勝手だからな……」  と言い、和也は両腕を頭の後ろへと回すと、さっき裕実に言っていたことを言い始める。 「雄介と何かあったんだろ? そんなこと、望の顔を見れば一目瞭然だからな。それに、眠れないほどに望が悩むことと言えば、それしか無いわけなんだしさ」  望はその和也の言葉に机を拳で叩くと、 「ああ、昨日……俺は雄介に別れるって言った……」 「……はぁ!?」  流石の和也も、まさかそこまでだとは思ってなかったのだろう。声を裏返したのだから。 「ちょ、ちょっと! そこまでになるなんて……昨日は何があったんだ!?」  まさか本当にそんな事になってるとは思わず、和也は興奮気味にそう言うと、慌ててソファから立ち上がり、望の側へと向かうのだ。

ともだちにシェアしよう!