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ー波乱ー107
次の日、望は雄介が作ったご飯を食べずに家を出て行った。
昨日の夜、喧嘩したばかりで、そう簡単にそれを忘れられるわけがない。
平気な顔で雄介のことを見つめられるような性格ではない望。 とりあえず雄介には「今日は会議があるから……」と言って出てきた。
望は病院に向かう前にコンビニへと足を運び、おにぎりとお茶を購入すると、それを車の中で食べ、時間を少し潰してから車を病院へと向けて走らせた。
そうすることで、いつもと変わらない時間に駐車場へと着いた。
望は何気なく和也の車が置いてある場所へと視線を向けると、今日は珍しく和也の車があった。
いつもは望より後に来る和也。とりあえず和也の車がある近くまで行ってみる。
すると、そこには人影があり、望はそこで足を止めた。
流石に和也も望の存在に気付いたのだろう。和也は裕実から離れると、車から降りてきて、
「どうしたんだよー、珍しいな? 望が俺の車に近寄ってくるなんてさ……いつもなら、病院に着いたらそのまま部屋の方に向かうのにさ」
和也は望の様子がおかしいことに気付きながらも、普通の会話を続けた。和也の場合、いつもと様子が違うときでも普通の会話をしながら相手の様子を伺うことがあるようだ。特に望の場合には分かりやすいのかもしれない。
「お前こそ珍しいだろうが……なんでこんな早くに来てんだよ……だから、俺の方こそ気になって見に来たんだからな」
望は和也に気付かれないように話を続けたが、
「ん? 今日の望、顔色悪くねぇ?」
和也は望の顔を覗き込むようにして見つめてくる。しかし、今日の望は気が触れたのか、それとも元々そういう感じだったのか分からないが、急に怒り出し、和也を払い除けようとした。だが、和也の方はそれをうまく交わしてしまう。
「今日の望、本当に顔色が悪いんだけどな? 何かあったのか? 言葉ではいくらでも誤魔化すことはできるけどさ……顔色だけは誤魔化すことはできねぇんだよ。俺は何年……お前と……患者さんのこと……見て……ちょ、おい!」
望はいきなり和也の前から走り出し、自分の部屋へと向かってしまった。
和也は望の後ろ姿を見ながらため息をつき、同時に裕実が車から降りてきた。
「望さん……」
「分かってる……あれは昨日、雄介と何かあったって態度だったからな。きっと、本当は俺に相談したいことがあって来たんだろうけど、お前と居たから言わずに行ったってことなのかな?」
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