1014 / 1491

ー海上ー42

「ここは俺の車の中だから、恥ずかしい言葉を言っても外に聴こえてしまう心配なんてないっつーの……」  確かに和也の言う通りなのかもしれないが、そこは望の性格が許せなかったのかもしれない。  本当に望は和也には口では勝てないような気がする。 まぁ、確かに和也という人物は口が達者だからなのかもしれない。  しかし病院でもそうだ。 望がいくら言っても言うことを聞かない患者さんでも、和也が何かと説得すると言うことを聞いてくれる患者さんもいるほどなのだから。  こう望と和也の言葉の差とはどういうものなんだろうか? 「……ぞむ……! 望!」 「あ、ああ……何だ?」 「今、何を考えてたんだ? 俺、もう何回もお前のこと呼んでたんだけどな。」 「あ、いや……なんでも」  望はそこまで言うと窓の外に流れる景色の方に視線を移してしまう。 「話したくないんだったらいいんだけどさーってか、お前って、言いたいことを心に溜め過ぎなんだよ!」  と丁度信号で止まった瞬間、和也は真剣な瞳で望の胸辺りを指で二回ほど突く。 「確かに望は素直じゃねぇのは前から承知してるんだけどさ……言いたいことを心の中に溜めておくっていうのはあまりいいことじゃねぇよな? そう、体の方は大丈夫でも心の方は参っちまうからな。 だから、素直にならなくてストレスにならないことなら別に言わなくてもいいんだけどよ……言わないとストレスになるようなことは俺でも裕実にでも雄介にでも言えよ……いいや、寧ろ、言っちまった方が楽になると俺は思うんだけどな」  和也がそこまで言うと、信号の方は青になったのか、和也は車を走らせる。  和也という人間は普段はふざけたり能天気そうな感じに見えるのだが、一度真剣な話を始めると真面目になるというのだろう。  だが、その和也が真剣になった時には、望からしてみたら心に響くというところだろうか? 「あ、まぁ……そんな事……わかってるよ……だけど、俺の場合にはそれを上手く口に出来ねぇっていうのかな? 自分が恥ずかしい思いをするのも嫌だし、相手にこんなこと言っちまったら嫌われるんじゃねぇかと思っちまってな」 「ん? 俺の方はそんな事全くもって気にしねぇよ……それに、そこは望の性格じゃんか……もう長年一緒にいるんだからさ……なんていうの? 俺的には望のこと分かってるつもりなんだけどな。 なぁ、望さぁ、これだけ、俺と一緒にいて、俺の言葉でムカついた言葉ってあるか?」  望はその和也の言葉を考えると、 「本気ではないのかもしれねぇけど……まぁ、多少はってところかな?」 「じゃあ、本気で嫌いになったことは?」 「嫌いになった時はあん時位だろ? 最初にお前と喧嘩した時。 でも、お前と少し離れてみて、やっぱ、俺にはお前がいないとダメだったんだ……っていうのを気づかされた感じだったけどな」 「俺もだから、人の事は言えねーんだけど……。 でも、俺の方も変われたのはお前のおかげだと思ってるけどな」 「俺もだからさ」

ともだちにシェアしよう!