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ー海上ー45
すると、うどん屋が視界に入って来たようだ。
「望って、うどん平気なのか?」
「俺は平気だけどー」
「なら、うどんに決定!」
和也はそう言うと、うどん屋の駐車場へと車を止めた。
そのうどん屋は古民家を改造して作られたらしく、昔ながらの平屋の建物で、まるでタイムスリップしたような感じだ。そして、都会とは違い、ここでは時が止まっているようにも思える。店の前には水田が広がり、都会に住んでいる望や和也にとっては、こんな景色はここまで来なければ見られないだろう。
二人は店内に入り、店員さんに案内されて和室に腰を下ろした。店内の照明は蛍光灯ではなく、淡く光が弱い昔ながらの照明が使われている。
「東京にもこんな所があったんだな」
「ああ、そうみたいだな……何百年前の造りなんだろう?」
「分からねぇな……俺、歴史苦手だったしさ」
「でも、今でもこういう家が残ってるのって凄くねぇ?」
「確かにそうだよな。」
二人が店について語っていると、突然、和也のお腹が鳴った。
「お前なー!」
「仕方ねぇじゃんか……腹減ってんだからよ」
「お前にはデリカシーってもんがねぇのか?」
「お腹が空いた時にお腹が鳴るのは仕方ねぇだろ? 人間の自然現象なんだからさ」
「お前には緊張感っていうもんが無いから鳴るんだろうが……」
「全然緊張感のない場所で鳴ったって平気なんじゃねぇの?」
そう言われてしまえばお終いだが、和也は気にする様子もない。
「……ったく。さっさと食うぞ!」
二人はようやくメニューを頼んだ。
しばらくして、二人の前には注文した料理が運ばれてきた。二人は手を合わせ、「いただきます」と言って食べ始める。
「やっぱ、カップラーメンとは違うよな?」
「変なものと比較してんじゃねぇよ。カップラーメンとは全然別格なんだからな」
「じゃあ、素直に『美味い』って言えばいいんじゃねぇのか? 素直になる練習しろよ。別に俺たちには素直じゃなくてもいいけどさ……こういう所ではいいんじゃねぇのか?」
「ああ、そこは素直に美味いと思うよ」
「だよなー。久々に美味いうどん屋発見って感じだもんな」
「ああ……」
二人は食べ終わると、背もたれに寄り掛かる。
「結構、量あったな」
「俺の方は苦しいくらいだぜ」
「確かに、望にとっては量が多かったのかもな」
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