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ー海上ー47
「まだ、その『お礼』の意味を俺は望の口から聞いてないんだけど……さっきはあくまで俺の予想ってことだしな」
「あー……だから、それはだな」
「そこまで言いかけてるんだったら言っちまえよ。さっき、楽になるって言ったんだっけだろ?」
そう和也に言われても、望からしてみたらそう簡単には口に出せない。和也は望がそういうことを言えないと知っていながらも、あえて聞き出そうとしているようだ。
望は窓の外に流れる景色を眺めながら、言う決心がついたのか、
「だからだな……今日は雄介がいなくて寂しい思いをしているだろう俺を外に連れ出してくれて、ありがとうっていう意味だ」
和也はその望の言葉にクスリと笑ったが、
「言えたんじゃねぇのか?どうだ?少しはスッキリしたか?」
「ああ、うん……まぁな……」
そう端切れ悪く答える望だったが、どうやら和也の思惑通り、望は少しスッキリしたようだ。
和也から見ても、望の横顔は少し微笑んでいるように見える。
「よしっ!じゃあ、次は裕実を迎えに行くかな!」
和也はすぐに話を切り替え、そう言った。和也というのは、話を長く引っ張らない性格なのかもしれない。いつまでも引っ張ってしまうと、今度は和也が望に嫌われるかもしれないと考えているのかもしれない。
車を走らせると、段々と景色が変わってくる。
先ほどまで広がっていた田園風景はやがて住宅密集地へと変わり、少しずつ現実世界に戻ってきた感覚がする。
ちょっとした小旅行を楽しんだ二人は、夕陽が沈む頃にはビルが立ち並ぶ街の風景へと戻ってきた。
そして、いつもの病院の駐車場に到着する。
「終わる時間まであと三十分か……とりあえず、裕実にはメール入れておくな」
「ああ」
和也は望にそう告げると、胸ポケットから携帯を取り出し、裕実にメールを送った。
「なあ、和也……俺なんかより裕実の方を心配しなくていいのか? なんつったっけ? 新城先生って危なくなかったんだっけ?」
「あー、あれ?俺的にはもう気にしないって感じになってきたんだけど……だって、それは望の親父さんの計画だったしな」
「だからって平気なもんなのか?」
「平気だって……それにアイツ、新城先生は裕実のことを好みじゃねぇって言ってたしな。それに裕実は俺のもんだしさ、世界中で裕実のことを愛してるのは俺だけだしよ」
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