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ー海上ー96

 強く打ち付けられてしまった二人は、頭を打ってしまったのか体を強く打ってしまったのか、どうやら意識がないようだ。 体がピクリとも動かない状態の二人。  その頃、病院では入院病棟のテレビの前に人々が集まって何を真剣に見ている。  裕実は検温の為にそこにいた患者さん達に声を掛けていた。 「検温の時間になりましたから、ここに居る方々は病室の方にお戻り下さいね」  そう裕実は顔を引きつらせながら言うのだが、 「ちょっとだけ待ってくれねぇかな? 今、いい所なんだからさぁ、これが終わったら病室に戻るしー」 「ダメですっ! 待てませんから!」  そう言うと、テレビのリモコンでテレビを消してしまうのだ。 「これで、気になりませんよねー」  裕実がそう言うと、そこに居た患者さん達は一斉にソファから立ち上がるのだが、その中に居た一人が、 「しかし、日本で船の事故って珍しくないか?」  それを聞いた裕実は何かを感じたのであろう。 自らテレビを消したのにも関わらず、もう一度テレビを付けてみる。 すると、そこにはヘリコプターからであろうか、海の上で完全に船が転覆し始めているのが目に入って来る。  そして各船にはそれぞれ名前があるのだからそれを読んだ裕実は、 「空晴号……空晴号!? って、今日和也達が乗っている船の名前がそうだったような?」  裕実は自分の頭の中にある記憶を辿ってみているようだ。 瞳を宙へと浮かせ、完全に何か考えているのだから。 「あ! やっぱり! 今日朝からの和也からのメールにそんな事書いてあったような気がします! ……って、和也大丈夫なんでしょうか?」  そう裕実は今の船の転覆事故を見て独り言を言いながら、今度は院長室の方へと足を向けるのだ。  そして院長室まで走ってきて、院長室の前まで来ると息を整え、院長室の方へと入って行く。 「院長!」 「その様子だと君も気付いたようだね」 「はい! 確か梅沢さんと望さんが乗っている船って……」 「ああ、そうなんだ。 今、事故を起こしている船だよ」 「では、今すぐに港の方に向かいましょうよっ!」 「じゃあ、行こうか。 今君がしている仕事は他の人に任せて、君と新城君は私と一緒に港の方に向かおう!」 「はい!!」  裕実は大きな返事をすると、裕実と院長と新城は港の方へと向かうのだ。

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