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ー海上ー98
「ああ、ってかさ、この俺達がいる状況って、客室のドアが下になってねぇか? んで、廊下の方が横になってるんだよな?」
「……って事はこの船はもう転覆してるって事になるんだよな?」
「そういう事になるんだろうな。 しかも、窓が天井になっちまってるしよ」
「とりあえず今はもう荷物所じゃねぇって事は確かみたいだな。 俺達の方も何とかして船から脱出しなきゃなんねぇみたいだしよ」
「だから言ったじゃねぇか! 自分達の命の方も危なくなるって! どうした? 望……お前にしては珍しく冷静な判断が出来なくなってたんじゃねぇのか?」
和也はそう望の後に付いて歩きながら言っている。
しかし、普通なら手を使って開ける場所となっているドアが今は下にある状態でデコボコしていて歩きにくい上に、海の上なのだから波に揺られバランスも取りづらい状況でもある。
だが二人はそんな状況でもどうにか歩みを進め、先程甲板だった場所まではどうにか辿り着けたようだ。
だが今はもうそこはドアが横にあって、そこから外に出られるような感じではない。
出口も甲板にも脱出する事はもう困難な状態だった。
「まさか、この状況って!?」
「船が完全に転覆状態で、今はもう客室に通じる廊下位しか行き場所がねぇって事だよな?」
「……ってか、どうすんだよー! 俺達!」
流石に望もやっとことの状況に気付いたのか、慌てたように言っている。 だが逆に和也の方は冷静なようだ。
「ま、とりあえず……ここで助けを待つしか今はねぇよな?」
「だけど、この部分だっていつ沈むかっていうのは分からないだろ!?」
「ああ、分からねぇよ。 助けが来る前に沈むかもしれねぇし、間に合うかもしれねぇしな」
和也の方はもう諦めているのか、それとも助けに来てくれるって事を信じているのかは分からないのだが、その場所で左腕を押さえながら床へと座り込む。
「確かに……まぁ、慌てたって仕方ねぇか」
そう言いながら望も床へと座るのだった。
「……って、和也……腕どうしたんだ?」
「何でもねぇよ……たださっき壁に叩き付けられた時に打っただけだ」
「診せてみろよ」
「大丈夫だって、大した事ねぇし」
「俺からしてみると相当痛そうなんだけどな」
「大丈夫だってっ! 俺だって看護師なんだから自分の体位は自分で分かるんだからさ」
今日は変に頑固な和也に対して、望は溜息を吐くと壁へと背中を寄り掛からせる。
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