1071 / 1491
ー海上ー99
一方、裕実達が居る港では、船に乗っていた人達が続々と陸へ上がり始めて来ていた。
裕実はそんな中上がってくる人達を見ているのだが、未だに望達の気配が無いようだ。
「望達はまだみたいだね」
「ですよねー。 他の方々は家族の方と再会しているようなんですが……」
そこへ、
「船に乗っていた乗客の最後の船が到着したようですよー」
という声が聴こえて来る。
裕実は今居る場所からその最後の船が到着する所まで見えないせいか、急いでその船の到着場所にまで向かうのだが、次から次へと乗客が上がって来る中で全くもって望や和也の気配がそこには無かった。
普段は穏やかな性格の裕実なのだが、港で乗客の事を誘導しているこの船の業者の近くへと向かうと声を掛けるのだ。
「本当に! 本当に! これで最後の乗客なんですか?」
「一応、私の方はそう聞いているのですが……」
「あの! この船に乗っていた友達がまだ戻って来てないんですよ! それって、いったいどういう事なんですか!? 貴方達はちゃんと乗客が船に乗ったって事を確認したのですか!?」
「ですが、船員によりますと客室に居たお客様は全員アナウンスで甲板の方に誘導し、そこに居た皆様は全員船の方に誘導したと聞いてるんですよ」
そこに、先ほど船で怪我をしたという人物が最後の最後の船で降りて来たようだ。
「すいません……今話をちょっと聞いてたんですが……もしかして、君が探しているお友達というのは眼鏡を掛けていて紺色のスーツの人でもう一人の方は気持ち的に眼鏡を掛けた人物よりも少し背が高くて灰色のスーツを着た人ですか?」
そう裕実に訪ねられても、今日の裕実は和也と望の服装までは知らない所だ。 分かると言えば望がしている眼鏡しか今のところ情報はない。 だから裕実は直ぐに頭を頷かせずに首を傾げている。
「他に何か特徴みたいな事はありませんか?」
「あ! 簡単にではあったけど、俺の体を診察して行ってたかな? でも直ぐに客室の方に行ってしまったようなのだけど……。 だから、俺達の方はボートに乗って待っていたのだけど、船が転覆し始めて来ていたから、俺達だって命が危うかったので、置いて来てしまったというのか、本当に申し訳ない……」
ともだちにシェアしよう!