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ー海上ー104

 望の不意打ちな行動に、和也の方は交わす暇なんかなかったようだ。 「痛っ!」  その望の行動に顔を痛みで歪ませる和也。 「ほらな……腫れてんじゃねぇか! 俺にこんな事隠すなんて百年早いつーの!」 「でも、大したことはねぇって言ってんだろ!」 「腫れてるって事はさぁ、ただぶつけただけっていうのもあるのかもしれねぇけど……ひび以上の事もありえるんだからなっ!」 「分かってるよ……そんな事っ!」  和也はそう言うと力を振り絞り、望が思いっきり腕を振りほどく。 「何……そんなにイライラしてんだよ。 いつもの和也とは違うように思えるんだけど?」  望にしては珍しく、和也の方に笑顔を向ける。  もしかしたら今まで望が言えなかった事を雄介に伝える事が出来たからなのかもしれない。それで今の望は心も穏やかになっているのだろう。 だから心に余裕が出来て人にも親切に対応出来るようになったのかもしれない。 「和也……今まで本当にありがとうな……俺……今までお前の言葉にどれだけ助けられたか? お前がいなかったら雄介に対してここまで本気になる事はなかったかもしれなかったからさ。 お前は俺の事を好きだったのに諦めてくれた。 お前は俺のパートナーであって親友って所かな? まぁ、こんな俺だけど、これからも宜しくな」  望は再び和也の方に笑顔を向けると手をスッと差し伸べる。 すると和也の方もその望に答えるべく手を差し伸べるのだ。 「望……言うけど、俺はそんなに大した事なんかしてねぇぜ。 最終的に変われたのは雄介の努力とお前自身が変われたって事だと思うしな」  和也はそう言うと救助船の上に立って大空に向かって伸びをする。  今日は確かに事故には巻き込まれてしまった。 だけど心の中は今の空のようにスッキリとしているのは気のせいであろうか。  もうすぐ船は陸へと上がる。  陸では裕実達がもう和也達の救助船を捉える事が出来ている頃だろう。 和也の方に向かって裕実が大きく船に向かって手を振っている姿が見えてくる。  そして、ようやく陸へと上がる事が出来た三人。  裕実は和也の姿を見ると、和也の所にまで走り、和也の事を抱き締める。 「よかったですよー、助かったみたいで!」 「ああ、雄介のおかげだよ。 雄介は最高のレスキュー隊員だよな」  そう和也は雄介にも聞こえるような声で言う。  その和也の言葉に、雄介と望は視線を合わせて微笑むのだが、次の瞬間、雄介は望の方に向かい大声を上げるのだ。 「あー!!」 「何だよ……急にビビるじゃねぇかぁ」

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