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ー海上ー103

 そして二人は海面へと顔を出すと、救助船へと引き上げられるのだ。 「望! 雄介!」  そう二人に一番に声を掛けて来たのは和也だ。 「望ー、どうしたんだよー!」 「ああ、それな……ガラスの所に酸素ボンベの紐が引っかかっておって浮上出来なかったみたいなんや」  望の代わりに答える雄介。 望の方は呼吸を整えるのが今は精一杯な所だからだ。  呼吸を整えた望は雄介の事を見上げ、 「お前なら、俺達の事助けてくれるって思ってたからな」 「まぁ、俺の方はお前等を助ける事になってるとは思うてなかった事やったけどな。 まぁ、例え要救助者がお前等やなくても俺等の仕事はこういう仕事やっちゅうことやねんな」  望は雄介の肩に腕を回すと、和也が目の前にいるのにも関わらず雄介の唇に唇を重ねる。 「の、望……急に……ど、ど、どないしたん!?」  そう動揺してしまったのは雄介の方だ。 「正直言って……俺の方は仕事で一週間もお前と離れるのが嫌だったんだよ……でも、今は船で事故が起きて良かったとさえ思ってちまってる俺がいるんだよな。何で俺はこんなにもお前の事を好きになっちまったんだろうな……。 こんな感情、本当に俺にしてみたら初めての事なんだからな……! 俺からしてみたら雄介の事初めは何とも思ってなかったんだぞ! だけど、今は違う! 一日だって離れたくはない気持ちになってきちまってるんだよ……だから、雄介……」  望はそこで一旦言葉を切ると、雄介の事を見上げる。 「俺は本当にお前の事が好きだ……いや、もしかしたら今は好き以上の感情が芽生えてきているのかもしれない。 ……俺はお前に目覚めるのは遅かったのかもしれねぇけど……お前が俺の事諦めずにいてくれたおかげで、本当に俺はお前の事好きになる事が出来たんだ……本当にありがとうな……」  雄介はその望の告白を笑う事なく、驚く気配すらなくただただ無言で聞いていた。 そして、望が最後まで言い切ると優しく微笑み、望の事を優しく強く抱き締める。 「俺は望の事を初めて見た瞬間から好きやった。 せやな……望がやっと俺という存在を認めてくれたって事やんな」 「ああ、そういう事だ」  二人は合図した訳でもないのに自然と視線がぶつかると再び微笑む。  一方、和也の方は二人にそんな再会シーンを見せ付けられてしまい、ため息を漏らすのだ。  すると望はその和也のため息に気付いたのか、突然、和也の方へと振り向き、和也が負傷しているであろう左腕を掴んで袖を上げる。

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