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ー海上ー102

「ほな、和也行くで!」  雄介は和也の体を片手で支えると、 「和也、息止めて!」  その雄介の言葉とほぼ同時に、雄介と和也は水中へと潜り、海面の方へと浮上して行く。  望の方も雄介に続いて浮上しようとしたのだが、何故か酸素ボンベの紐が窓枠に引っかかってしまい、浮上できないでいた。  先に海上へと浮上した和也と雄介。 そして直ぐそばにいた救助船の上へと上がると、今まで体内に取り込めていなかった空気を吸い込むのだ。 「はぁ……はぁ……和也……大丈夫やったか?」 「はぁ……大丈夫だからっ! はぁ……はぁ……」 「望が和也怪我しとるって言うてたんやけど……」 「大した事ねぇって言ってんだろ! ただぶつけただけだからな……」 「そうなんか?」 「ああ……ただ、望が大袈裟に言ってるだけだしさ」  二人の呼吸が整った頃、雄介は海面の方を覗いてみるのだが、なかなか望が浮上してくる気配がないようだ。  雄介が泳ぐのが早いからといっても、雄介達が浮上してきてからは既に五分は経っていた。 流石にちょっと遅いような気がする。 「望の奴……遅くないか?」 「確かにそうだよなぁ」  和也も気になって海面の方を覗いてみるのだが、未だに望が浮上してくる気配が本当にない。  かなり上がってきているのならば、望の方は酸素ボンベを担いでいるのだから気泡が上がってきてもおかしくはないのだが、未だにそれがない。 「ちょ、もっ回潜って、望の様子見てくるわぁ」 「ああ」  雄介は和也に向かってそう言うと、新しい酸素ボンベを背負って再び海の中へと潜っていってしまうのだ。  雄介が潜っていく中で望の姿は全くない。  船が沈んでしまってから大分経ってしまったからなのであろうか。 雄介の方も大分潜ってきているのにも関わらず、未だに船の姿が見当たらない。  雄介が再び海の中に潜って五分が過ぎた所であろうか。 やっと船の形が見えてきた。  すると望が先程雄介が割った窓の所でもがいているようにも見える。  雄介はその場所に急ぐと、今の望の状況がどうなっているのか把握しようとしているようだ。  すると酸素ボンベの紐らしき物が丁度割れたガラスに引っかかってしまい、抜けなくなっていた。  雄介はそれを外すと、望の手を取って浮上し始める。  今日の天気は快晴で、地上を照らしている太陽が地上への出口だ。  その太陽の光は暗い海の中までも照らし、二人を海上へと導く。

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