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ー海上ー101
「アレか……!?」
雄介はちゃんと何かが確認できるところまで向かうと、そこから船内の方に視線を向ける。 すると、そこには望の姿があった。
「望!」
雄介はそこにある窓を叩き、望達の反応を見るのだが、望も和也の方も未だにピクリとも反応しない。
雄介は持っていた道具で窓を割って船内へと入り込む。 雄介が見ていた窓からは船内に水が完全に溜まっているように見えたのだが、どうやら望達がいる所には僅かではあるのだけど、空気がある空間となっているのかもしれない。
そう、だいたい頭三つ分位のスペースがあって、望達はそこに顔を出して残り少ない酸素を吸っていたらしい。
だが、望達がこんな状況になってからいったいどれくらい経ったのであろうか。 望達がそこでピクリともしない状況を見ると、かなり時間が経ってしまっているのかもしれない。 しかも二人はもう完全に気を失っているのだから。
雄介は酸素吸入器を手にすると、まずは和也の方に装着し、軽く和也の頬を叩いてみることにした。
すると、新しい空気が肺に入って来たおかげなのか、和也はゆっくりとではあったのだが瞳を開ける。
「……雄介?」
和也は酸素吸入器の合間からゴモゴモとではあるのだが、雄介に向かって話しかけていた。
「ああ……そうや……。 とりあえず、和也……もうちょい待っててな……次は望にも酸素してやらんと……」
雄介は一旦、和也から酸素吸入器を外すと、今度は望の方にも酸素吸入器を装着させる。 そして和也の事を起こした時のように、望の頬を軽く叩くと、望の方も瞼を開いてくれたようだ。
「良かったわぁー、二人共無事だったみたいでな……ほな、上に上がろうか? 和也に望……もう二、三呼吸したらもう地上の方に浮上するし、ええな!」
「な、雄介……俺の方は全くもって怪我とかっていうのはしてねぇからさ、先に和也と一緒に浮上してくれねぇか? 俺の方はお前の後を追ってけば平気なわけだし、水泳の方は得意な方だからな」
「……怪我!?」
雄介は望にそれを聞いて目を丸くしている。
「ああ、和也はそういう事に関して隠すんだけどさ、どうやら怪我してるみたいなんだよな。 人間って痛いと思うところって無意識に摩ってしまうんだ……それを和也はずっとしてたしな。 腕が使えないんじゃいくら泳げる奴でも泳げないだろ?」
「せやな……確かに望の言う通りやんな。 ほな、望に酸素ボンベと吸入器渡しておくな……望はそれ吸いながらゆっくりと自分のペースで浮上してくるといいわぁ……俺の方は和也連れて一気に上がってまうしな」
雄介はそう言うと、今まで自分がしょっていた酸素ボンベを望へとちゃんと装着させると、
「流石に今は水の中やから酸素ボンベ軽いやねんけど、浮上してきたら重く感じるやろうし……そこの所は気ぃつけてな」
「ああ、まぁ……」
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