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ー海上ー116

 写真というのは、それ一回きりの物だ。その時に戻り、もう一回撮る事等はできない。ネガが残っていれば確かに大丈夫なのだろうが、もう、そのネガは残ってはいないだろう。  しかも、望から雄介にもう一回その写真をくれとは言える訳もない。 「望ー、何考えてんだ? ご飯出来たぜ……」 「別に何も考えてねぇよ。飯が出来たんだったら食おうぜ」  望は和也にそう言うと、四人テーブルの席へと着く。 「ま、冷蔵庫にあった食材使って作らせてもらったから、大したもんは作れなかったけどな……だけど、飯にはなるだろ?」 「ああ、今、食欲の方はなかった感じだったから丁度いいくらいだしな」  二人がテーブルに着いた後、リビングにあるテレビでは今日の船の事故のニュースが流れていた。  船が爆発した原因は調理室でガスが充満してしまったらしく、そこで爆発事故が起きたようだ。 「だから、あの怪我した人はコックの格好をしてたのかー!」  そう声を上げて納得する和也。  それから、その番組では陸へと上がって来た救助者がアナウンサーにインタビューされている所へと変わったようだ。 「あれ? テレビ画面の端っこの方に雄介と裕実が写ってんじゃねぇ?」 「んー、今の俺には見えないんだけどな? オレンジ色の服を着ている……ゆ、雄介か? 服の色だけは分かるんだけどな?」  今まで二人はこの船の事故に巻き込まれていたのだが、今は助かったからこそ笑顔でいられるのであろう。 「まぁ、更なる原因っていうのは船が完全に沈没しちまってるから分からないんだけどな」 「まぁな……とりあえず、犠牲者が出なかっただけ良かったんじゃねぇのか?」 「終わり良ければ全て良し! ってことだな」 「まぁ、そういう事になるなぁ」  望はそう言うと、和也が作ってくれたご飯を口にする。  それから望が先にお風呂に入って、いつも通りの生活へと戻し、今日の二人はあんな事があったのだから疲れてしまっているのであろう、十一時には寝てしまったようだ。  望の家の二階には今は二つ部屋がある。勿論、雄介と望の部屋は一緒なのだが、もう一つはきっと和也達が遊びに来た時用の部屋なのかもしれない。望のお父さんである裕二がそこまで考えておいてくれたのだろう。二人はとりあえず別々のベッドに寝て、今日一日を終わらせたようだ。

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