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ー海上ー115

「お前なんて客であって客じゃねぇんだよ」 「まぁ、そうなんだけどよ。俺の方も今日の事故で疲れてんだし、簡単な物でいいか?」 「そこは構わねぇよ」  二人は友達らしい会話をしながら、和也は望の家の駐車場へ車を止めると、望の方は先に車から降りて家の方へ向かう。  望は家の鍵を開け、部屋へと足を運ぶと、部屋内はシンと静まり返っている。そして、誰も居る気配はない。  そんな事は分かっていたのだが、やはり雄介がいない生活というのは慣れないようだ。  そこに望はため息を吐くと、部屋の中へと入って行く。  そして、スーツを着崩しソファへと座る望。  今日、用意して行った荷物は今はない。 「流石に荷物の保証はしてくれねぇよな?」  望の後ろに着いて部屋に入ってきていた和也にそう声を掛ける望。 「何か大事な物でも入っていたのか?」 「んー、別に……」  望はそう適当に答えたのだが、和也の方はその望の何気ない返事に、 「なぁ、その答え方だと何か意味ありそうなんだけどな」  和也はその望の言葉を弄る為だろう。望が座っているソファの背もたれへと寄り掛かる。 「とりあえず、応急セットは無駄になった」 「それと?」  和也が突っ込むと、望の方は急に顔を赤くしている。 「あー、もう!どうでもいいだろー!お前はもう飯作れよなぁ!」 「へぇー、そういう事かぁ……望はやっぱり雄介の事が好きなんだよな」 「どうして、お前は分かるんだよー」 「望の顔に書いてあるしー、引っ掛けてみた」  そう言いながら和也はキッチンへ向かう。これ以上突っ込むと望に怒られそうだったからだ。  その姿にため息を吐く望。  和也の言う通り、望は今日持っていっていた荷物の中に、雄介から貰った写真を一枚入れていた。  それはレスキュー隊になったばかりの写真で、多分雄介の仲間にその写真を撮ってもらったのだろう。  そこに写る雄介はオレンジ色の服を着て生き生きとした笑顔の写真だ。  望もその写真は好きだ。  プロのカメラマンが撮った写真とは違う自然な笑顔。  しかも今日の朝、雄介に渡された写真で、望はいつものように「いらない」と言ってしまったのだが、雄介は半分無理矢理荷物のポケットに入れて来た物だ。  内心では望も好きだった写真だったのだから、呆れながらも微笑んでいた覚えもある。

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