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ー海上ー114
「あのさ……デートでも何でもいいよ。お前、確か今日は眼鏡なかったんだよな?って事は車の運転出来るのか?」
「あ……出来ねぇな」
「だからさ、明日、朝……雄介が帰って来たら俺の車で病院の駐車場まで送ってやるからさ、望の車を雄介に運転してもらったらいいんじゃねぇのか?」
「そうだな。とりあえず、ありがとうな」
望はそんな事を素直に言うのは恥ずかしいのだろう。流石に和也の方に顔を向けずに正面を向いたまま、和也へと感謝の言葉を告げたようだ。
望の性格を知っている和也はその望の行動に怒ることはなく、望が精一杯言った事に微笑み、和也の車がある所へと向かうのだ。
望は和也の車へと向かうと、自然と後部座席へと座る。
「前じゃなくていいのか?」
「馬鹿かお前は……これは俺なりの遠慮に決まってんだろ?」
和也はその望の言葉に納得すると、シートベルトを締め、車を走らせる。
夜の東京は、星以上の光が暗い闇を照らし続けている。
いや、本当は星の方が多いのかもしれないのだが、この東京の明るさでは淡い光を放てない星は人工的な光には負けてしまうのだろう。
二人の間に会話がないまま、車は望の家へと向かう。
そして二人は急に、
「あのさぁ」
「あのさ」
と同時に同じ言葉を口にする二人。
「望にしては珍しいなぁ、望の方が先に言ってもいいぜ」
「別に俺の方は大した事はねぇからさ、だから、先に和也の方が言えよ」
「別に俺の方も大した事じゃねぇんだけどな。ただ、車内が静かだったのが嫌だったというのか」
「そういう事か……それはいいんだけど、もし和也が話するんだったら何を話すつもりだったんだ?」
「あー、んー、適当に何か言ってたかな?」
「例えばどんな事だったんだ? って聞いてんだよ」
「別にいいじゃねぇか……まぁ、望の事をいじるような事を言ってたのかな?」
そうニヤけて言う和也に、望はため息を吐く。
「まったくお前らしいよなぁ」
と言い、望は窓の外で流れる景色を見ると、既に見慣れた景色へと変わっていた。
「まぁ、もうすぐ着くな」
「ああ。ま、前と変わらない距離だからな」
「そういう事だ。な、望……飯はどうするんだ?」
「あー、どうする? お前が作ってくれるんだったら家で食うでも構わないぜ」
「おい……客に飯作らせる気かよ」
そう軽く突っ込む和也。
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