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ー崩落ー27

「それでも医者なんかいなぁ。流石に今の冗談は受け入れられへんで。とりあえず、待っとってな、下に行って色々取って来るし」  そう言うと、雄介は階下へ向かい、冷蔵庫にしまってあった冷えピタを持って二階へと戻ってくる。そして、それを望の額に貼り、横になった。  雄介が戻ってくると、望は安心したかのように雄介の手を見つけ、握る。 「お前の手……冷たくて気持ちいいよな?」 「今の季節はエアコンとかがないと冷えてまうしな。それに、望の場合には今は熱があるから余計にやろな? あ!」  雄介は急に大声を出すと、 「熱で思い出したわぁ……今の望は水分も摂らなきゃアカンねんやろ? そしたら、水も持って来ておかんとな」  雄介は再び布団から抜け出し、階下へ向かってミネラルウォーターとグラスを持ち、二階へと戻ってきた。 「ゴメンな……こういう風に人を看病する事に慣れてなくて。きっと、和也やったらこんな事せぇへんねんと思うねんけどな」 「和也の場合には仕方ねぇだろ? そういう仕事してんだからさ。和也に関してはこんな風にお世話する事が仕事なんだし。確かにお前はこういう事に関しては不慣れなのかもしれねぇけど、俺からしてみたら十分過ぎる位なんだけどな」  雄介はその望の言葉にクスリと笑うと、 「そうかぁ。なんか、望にそういう風に言ってもらえると幸せな気分になってくるわぁ」  そう言って、雄介は望の体を優しく抱き締めた。 「今の俺は望の為に一生懸命だと思うわぁ。いや、いつも望の事を愛する事にって言うた方が正解なんかもしれへんな」  望もその雄介の言葉にクスリと笑うと、安心したかのようにゆっくりと目を閉じた。  それに気付いた雄介はリモコンを使って電気を消した。  そして次の日。望が起きると、隣に雄介の姿はなかったのだが、 「望……大丈夫か?」  そう声を掛けて来てくれたのは和也だった。 「あれ? 雄介は?」 「雄介は仕事……。それに、もう朝の十時だぞ。とっくに雄介は仕事に行ったよ」  そう言われてみれば、窓から差し込む太陽が朝の角度ではないようにも思えた。

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