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ー崩落ー29
和也のその言葉に、何も言えなくなってしまう望。
「ほらな、やっぱりそうじゃねぇか。言葉が言えなくなってしまうってことは、俺が言った通りってことなんだろ?」
本当に和也っていう奴は、言葉では望より上に行くことが多い。特にプライベートではだ。
「ま、話の方はまた今度にしてさぁ、とりあえず、飯食えよ。まさかとは思うんだけど、ご飯が食べたくなくて話してごまかそうっていう訳じゃねぇよな? 言っとくけど、それは俺が許さねぇし。それに、具合悪いんだから全部飯食えとまでは言ってねぇ。ただ、薬飲むためには何か胃に入れておかないと胃が荒れちまうって言ってんだけなんだよ。まぁ、それくらいは望だって知ってることだろ?」
「まぁ、それくらいはな知ってんに決まってるだろ?」
「なら、雄介のために早くよくなんなきゃなんねぇんだからさ、ひと口くらいは食べなきゃだろ?」
そう和也は、望に優しく微笑んでそう言う。
「やっぱ、和也ってすごいよな? 何だろ? お前と話していると、お前の言葉一つ一つが心に響くっていうのかな?いつも患者さんにそうしてんだろ? そりゃ、患者さんにも人気があるって訳だ」
「ん? 俺ってそんなに人気あるのか? やっぱり、そうだよなぁ、こんなにルックスもいいんだしさ」
「お前なぁ」
望はその和也の言葉にため息を吐くと、
「やっぱし、お前を褒めると調子に乗るだけだったな……それに、俺はルックスまでとは言ってねぇよ」
「じゃあ、性格とか? 確かにそれもあるよな?」
そう一人納得している和也なのだが、望の方はそんな和也に呆れたような表情をしていた。
「はぁー、もういいから飯食わせてくれねぇか?」
「ん? 食べる気になったのか? それなら良かったぜ」
今さっきまで呆れるようなことしか言ってなかった和也だったのだが、いつの間にか和也に誘導されていたのかもしれない。そんな和也に目を丸くする望。
「お前って、ホント、敵に回したくないタイプだよな?」
望はそうポツリと言うと、和也が作って来てくれたお粥を口にする。
和也の方は今の望の言葉が聞こえていたのか聞こえていなかったのかは分からないのだが、望に向かって微笑むのだ。
そして昨日同様に半分くらいまで食べ終えると、
「もう、お腹いっぱい……」
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