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ー崩落ー35
「あー! 望! 俺が悪かったって!」
そう言いながら、和也は望の手を止める。
「まったく、もう! まさか、お前がこんな事する奴だったなんて……つーか、何も裕実を狙う事ねぇだろうが……」
「お前じゃあ、面白くねぇだろ? 裕実だからこそ面白いんだろうが……」
「そうでした……まぁ、そこは望の言う通りかな? ってか、お前……トイレに行かなくていいのか?」
「あ! 忘れてたぜー!」
そんな拍子抜けするような言葉に、和也は転けそうになる。
望が部屋を出てトイレに行った後、和也は大きなため息を吐き、
「望って、あんなキャラだったかな?」
そう口にする和也。
「何だかいつもの望さんとは違うような気がしますよね?」
「熱があるからっていう訳でもなさそうしなぁ。 ああいう風に元気が良さそうな所を見てるとさ……まさか、お前が望の所に行って何か言ったんじゃねぇのか?」
本当に和也の方は勘が鋭いっていうのか、確かに近い事はあったのかもしれない。
だが、裕実の方は、
「ある訳ないじゃないですかー」
「じゃあ、何で望があんなにお前に心開いてんだよ……」
「そんな事知りませんよー。 望さんは前から僕には色々と話してくれてましたしね。 別に僕からしてみたら、ある意味いつも通りの望さんなのかなぁ? って思いますけどね」
「へ? 前からお前には心開いてたって事か?」
「そうですよ」
そこまで言われると、もっと深くまで真相を聞き出したくなってくる和也。
だが、その時、リビングのドアが開いて、望が戻って来る。
「今日はさ……体調いいし、薬飲んで少し起きてようかな? って……逆にあまり寝過ぎても体にも良くないしさ」
望はそう言うと、貰った薬袋から薬を出して飲み終えるとソファへと腰を下ろす。
望がここに居座ってしまうと、流石の和也も今さっきの話は裕実に聞く事は出来なくなってしまったようだ。
和也は仕方なく、さっき畳んでいた洗濯物を畳み始める。
「ん? 今日の和也、どうしたんだ? 急に大人しくなっちまったみたいなんだけどよ」
望はソファの背もたれから頭だけを和也の方へと向け、こっそりと裕実に問う。
「さぁ? なんか急に拗ねちゃったんですよねぇ」
「……へ? そうなのか?」 「それって誘導尋問ですか?」
「あのなぁ、俺は別に和也のように言葉巧みでもなんでもねーよ……会話の流れ的にそうなったんだろ?」
「そうでしたか」
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