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ー崩落ー36

「……ってか、お前、段々と和也に似てきたんじゃねぇのか?」 「まぁ、恋人に似るって言いますしね」  二人でそうコソコソと話していると、和也の視線が望達の方に向いていることに気付いたのか、望は和也の方に笑顔を向ける。  その途端に和也は大声を上げて、 「あー! って、望! 何を企んでやがるんだ!? 望が俺に笑顔向けるなんて絶対に何かあるだろ!」  だが望は、そんな和也がふざけて言っていることに気付いたのか、和也の頭を小突く。 「痛ってー!」  望の方は本当に軽く和也の頭を小突いただけだったのに、大袈裟に言う和也。 「悪かったな……あんま俺がお前に笑顔向けたことがなくてよ。さて、和也君、いつも煩いくらいな和也がどうして静かにしてたのかっていう理由を聞かせてもらいましょうか? まぁ、裕実曰く拗ねたっていう理由をね」  このことについて望は和也をからかうつもりだったのだが、逆にからかわれるとは思っていないだろう。 「じゃあ、教えてあげようか?」  望が和也をからかうつもりなのに、和也の方はそう望が尋ねると余裕そうな笑みを浮かべる。 「なんだよー。その、余裕そうな顔は……」  相手がそう余裕そうな笑みを浮かべれば、仕掛けた方が今度余裕がなくなってしまうのかもしれない。そんな和也に警戒する望。 「俺が大人しかった理由だろ? それは……」  某クイズ番組のように、なかなか正解を言わない和也。それを聞きたい望の方は、そんな風に溜める和也に焦れたくなってくる。 「それ、早く言えばいいだろうが……」 「本当に言ってもいいんだな?」  そう言いながら和也は、言葉だけではなく体までも近付けてくる。 「いいって言ってるんだからいいんじゃねぇのか?」 「なら、言ってやるよー!」 「あ、ああ! おう!」  望は自信あり気に返事したものの、どうやら心の中では不安そうだ。顔も段々と引きつったような表情へと変わっているのだから。 「そんじゃあさぁ、裕実の方もその事について言ってもいいんだよな?」  どうやら和也はまだ言わないようだ。今度は裕実にもその話題を振っている。まぁ、確かに裕実にも関係していることなので、裕実にも聞いた方がいいと思ったのかもしれない。  そんな和也の雰囲気から裕実は、和也が今望に何を言おうとしているのかが分かったのか、いや、寧ろその会話を裕実だって聞いていたのだから分かっていると言った方が正解だろう。

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