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ー崩落ー37
「僕の方は全然構わないのですが……でも、望さんの方はどうなんでしょうか?」
「だよなぁ」
そう言いながら、望を挟んでクスクスしている和也と裕実。
その間に挟まれてしまっている望は、もう心の中では動揺中なのかもしれない。そんな二人の顔を望は交互に見つめる。
「だからだな……裕実から望は裕実にだけ心を開いてるって話を聞いて、俺がそれに嫉妬してたってこと。嫉妬って言っても恋愛のじゃなくてな。裕実と望、俺と望だとさ、俺と望の方が長く一緒にいるのに裕実との方が深い話してんだなーって思ってな……そこに嫉妬したっていうのかな?」
そう言うと、和也は畳んでいた洗濯物を望へと渡す。
「そんなことかよー。溜められたから何を言われるのか? って警戒してたんだけどな」
望はすぐに笑顔になって裕実へと近付くと、
「和也って案外可愛いところあるのなぁ。俺達が仲が良いってことに嫉妬してたんだぜー」
「ですよねー。そりゃ、僕と望さんは和也とは違いますからね。同じ立場だからこそ話せて共感できる部分っていうのがあるんですからね」
この話題について始めは和也が押していたはずだったのだが、気が付けば裕実と望とで和也を押しているようにも思える。
そんな中、和也は大きなため息を吐くと、
「はい! 降参! お前らに組まれたら、俺はお前らに勝つことなんかできません! ついでに言うと、もうこれ以上、返す言葉も見つかりません!」
「やっと、わかったのか!? 和也もまだまだだよな」
「まぁな」
和也は負けを認めたような表情をすると、床に腰を下ろす。
一方、望は「もうこれ以上、和也に深く追及されなくて良かった」とでも思っているのかもしれない。望は裕実の方に笑顔を向けると、裕実も望のその笑顔に何かを感じたのか、笑顔を返すのだった。
だが、その二人のやりとりに和也が気付かないわけがないだろう。
「何、二人でこそこそとアイコンタクトしてんだよー」
「それは、秘密ですよ」
そう裕実は可愛く人差し指を一本立てて、それを唇の前に持っていきウィンクまでして和也に向けるのだった。
その裕実の行動に、和也は大きなため息を吐くと、
「お前らにはやっぱ勝てねぇや……ってか、それは裕実ズル過ぎだろー! もう、裕実にそんな顔されたら弱いに決まってんだろ」
そう言うと、和也はその場で地団駄を踏む。
「マジで今日は俺の完敗。もう俺はこれ以上何も言うことはありません」
そう言うと、和也は本当に完敗というのか白旗を振ってしまっているかのように、床の上に大の字になるのだった。
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