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ー崩落ー77

 しかも、頭を伏せて体を震わせてしまっているので、笑っているのか泣いているのか分からない。  そんな姿を見た雄介は心配そうに、 「急にどないしたん? まだ、具合悪いとか?」  眉間にまで皺を寄せて心配しているのに、急に望が顔を上げ、大声で笑い始めてしまった。  しかし、望はテレビもつけていないのに、なぜそんなに大笑いしているのだろうか。雄介からしてみれば、本当に眉間に皺を寄せて首を傾げてしまう。 「……って、ホンマ、何で笑っておるん?」  そんなに笑っていたら、気にならない人はいないだろう。  挙げ句の果てには、テーブルをバンバンと叩き始めている。  とりあえず雄介は料理をしながら望のその姿を伺っていると、やっと望は落ち着きを取り戻してきたようだ。とりあえず腹を押さえながら息を整えている。 「悪い……今、変なこと想像しちまったからよ」 「なんやねん……望がそないに笑っておるって事は相当おもろい事やねんやろな?」 「ん? 聞きたい?」  身を乗り出してまで雄介に聞く望。  だが、その顔はまだ笑いに耐えているようにも見える。 「だからさぁ、今、雄介が料理している姿を後ろから見た時にバレリーナみたいだな……って思ってな。それで、俺の頭の中にバレリーナの姿をした雄介が出てきて、踊ってるのを想像しちまったら急に笑えてきたって事」  雄介が一生懸命料理をしている姿を見て、なんという想像をしているんだろうか。  まぁ、それで望が腹を抱えて笑えてくれているのならいいとしよう。しかし、雄介本人としては、自分のことなので笑えるはずもない。  雄介はそこで大きなため息を吐く。 「ま、望が笑えるようになったって事は元気になってきたっていう証拠やし良かったわぁ」  そして、雄介は料理が出来上がると、それをテーブルへと運んでくる。 「もう、全部食べれそうなんやろ?」 「ああ、やっと……美味しそうな食べ物になった気がするな。何であんなに病院食ってマズいんだろな?」  望はそう言って手を合わせ、「いただきます」と言い、久々に雄介の料理を幸せそうに口へと運んだ。 「何で病院食は不味いのか? って聞かれても分からへんわぁ。まぁ、病院食っていうのは基本薄味だからっていうのもあるんと違う?」 「確かにそれはあるのかもな」

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