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ー崩落ー79
「じゃあ、俺は行ってくるな……」
「ああ、ほな、いってらっしゃい」
雄介は玄関先で望を見送る。
いつものように、望は自分の車に乗って病院へと向かう。その途中、望の車の前方に見覚えのある青いスポーツカーが見える。同じ方向に向かっているのだから、きっと和也の車だろう。
和也にしては珍しく、望より早く出発したのかもしれない。
望の前を走っていた車が病院の駐車場へ入ったので、間違いなく和也の車だとわかる。
望が車から降りると、和也と目が合い、軽い挨拶を交わす。そして二人は鞄を手に、指定のバス乗り場へと向かう。
「あれ? 裕実は?」
望は和也の隣に裕実がいないことに気づき、尋ねてみた。この旅行には裕実も同行する予定であり、裕実が一緒ということは颯斗も一緒ということだ。
「裕実は歩いて来てるみたいだぞ。今日は出掛ける準備してから来るって言ってたからな。それに、俺らは夜遅くまで仕事してたけど、裕実たちは夜の六時までだったからな」
「そっか……そういうことか」
そんな会話をしながら、和也と望はバスの停車場所へ急ぐ。バスの方へ視線を向けると、すでに何人かが来ているのがわかる。
その中で、窓側に座り肘を窓枠に引っ掛け、頬を手に当てて外をゆっくり眺めている一人の男性の姿が目に入る。
「……あ、そういや、新城も一緒だったんだよな?」
「仕方ねぇだろ? 裕実も行くってことはアイツも一緒ってことになるだろ?」
望はそう言いながら、持ってきた荷物を荷物入れに入れる。
「まぁな……確かにそれは仕方ないかー。裕実と一緒に出掛けられるんだったら、まぁいいかな?」
そんな話をしていると、二人の背後から誰かが背中を叩いてきた。
「おはようございます」
相変わらずの丁寧な口調で、二人はその人物が誰なのかすぐに気づく。振り返ると、そこには思っていた通りの人物が立っていた。
「裕実ー! やっと来たのか! 今日は歩いて来るって言ってたから、心配してたんだぜー」
「だって、それしかないじゃないですか? 昨日は和也が夜中まで仕事をしていて、僕の方は早めに仕事が終わってしまっていたんですから。それに、夜中に和也の家に向かうのは大変ですし、早朝に行った方がいいかな?って思いましてね」
「まぁな……。とりあえず、荷物はここに入れて、寒いから中に入ろうぜ!」
「はい!」
裕実の荷物もバスにしまうと、三人はバスへ乗り込む。裕実は颯斗の隣に腰を下ろし、その前に和也が座り、望は窓側に座る。
前と後ろに分かれて座った和也と裕実は会話を始めるが、望はこういうイベント事にはあまり興味がないのか、颯斗と同じように窓の外を眺めていた。
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