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ー崩落ー85
「ばっかじゃない! 僕がすぐに負けを認めるわけがないじゃないか! もしかして、梅沢さんは兄さんに答えを教えてもらって勝った気でいるの? まさか、そういうわけじゃないよね?」
本当に歩夢という人物は望よりも全くもって可愛くないと思う和也。もし、この場に裕二や望がいなかったら、歩夢のことを殴っていたかもしれない。
その証拠に、顔は怒りで奥歯を噛み締め、拳を握っているのだから。
そんな時、和也の隣に座っている望が和也の服の裾を引っ張る。
「もう、逆に歩夢に構うんじゃねぇよ。何言っても何かしら文句とか言ってくるんだしよ……寧ろ、こっちが疲れるだけなんじゃねぇのか?」
「でもよー」
「じゃねぇよー。自分でもくだらないって思わないのか? ガキ相手に本気になるなんてさ」
「まぁ、確かにそうなんだけどよ。こんなんじゃ、俺が望や裕実のこと守ってやることができないだろ?」
「別に俺はお前に歩夢から守ってくれなんて言ってねぇじゃんかよ。お前が勝手にそう思ってるだけだろ? 俺のことを守ってくれるより、裕実の方をお前が守ってやればいいんじゃねぇのか? ってか、俺とこんなこと話している時に裕実の方は大丈夫なのか?」
そう望に言われて和也は後ろの席にいる裕実の方に視線を向けるのだが、いつの間にか和也の後ろに裕実の姿がなかった。目を見開きながら辺りを見渡すと、窓側に裕実の姿がある。
和也がそんな裕実の姿に目をパチクリとさせていると、裕実が、
「新城先生が席変えてくれたんですよ。『ガキの修学旅行じゃないんだから……うるさいのはゴメンだ』って言ってね」
「そういうことだったのか……」
「……って、新城先生は言ってますけど、きっと、新城先生のことですから僕たちのことを歩夢君から守ってくださったんだと思いますけどね」
そう裕実は和也に笑顔を向ける。
「仕方ねぇな……今回のことはそういうことにしといてやるよ」
和也は急に安心したのか、正面を向いて深く腰に下ろす。
そしておもむろに今日持って来たリュックを棚から下ろし、
「やっぱり、旅行って言ったら、おやつだろー!」
そう急に明るく元気に言う和也。そして、その持って来たおやつを嬉しそうに食べ始める姿に望は大きなため息を漏らすのだ。
しかし本当に和也という人間は子供っぽい性格なのかもしれない。
「お前なぁ……ガキか?」
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