1246 / 1477
ー崩落ー118
それを雄介にこそっと言われ、その場で歩みを止めてしまう望。
「ほな……やっぱり、そこはできへんのやろ? それやったら、俺が運転するし」
「そうだな……雄介に運転任すわぁ。俺が運転したら、きっと、なかなかそこに入ることができないしな」
「ほな、車の鍵貸して」
「ああ」
雄介は望から鍵を受け取ると、地下駐車場に置いてある望の車の鍵を開ける。
さっきとは逆で、雄介は運転席へと座り、望は助手席へと座る。
「何か変な感じするな……久々に助手席だしよ」
「そういうもんなんか?」
「……ああ」
雄介は望と話しながら運転を始めた。
地下駐車場を出てしばらく走ると、ホテル街へと入る。とりあえず車が止められそうなホテルへと入るのだ。
「望、着いたで……」
「あ、ああ……」
こういった所に入るのは久々な二人。雄介は相変わらず堂々としているが、どうやら望は緊張しているようだ。
そんな望の様子に、雄介は、
「嫌なら無理して行かんくてええねんやで……」
その雄介の言葉に望はため息をつき、気持ちを切り替えたのか、
「お前さぁ、前に言っただろ。優しすぎるんだって……こういう時、どうするって俺言ったっけ?」
望は雄介を挑発するかのように上目遣いで見上げ、雄介の頬を人差し指で突くのだ。
それを聞いて、以前の言葉を思い出した雄介は車から降りて、助手席のドアを開け、望の手を取るとホテルへと向かう。
そして部屋に入ると、雄介はいきなり望をベッドの上へと乗せる。
「ホンマに今日はええやんな?」
「何度も聞くな……もう、ここに来ちまったんだから……そりゃ……やることは一つしかねぇだろ?」
流石にそこはストレートには言えない望は、雄介から視線を逸らす。
「ほな、遠慮なく俺がしたいようにしたらええってことやんな? 望が嫌がっても今日はもう止めへんで……」
雄介はそこまで言うと、望の両手をベッドに押しつけ、耳を舐めようとしたが、
「ちょ、雄介! そこはストップ!」
「……へ? なんやねんって……今、俺の好きなようにやってええって言ったやんか……」
急に望にお預けを食らった雄介は嘆くように言う。
「そ、それは、べ、別にいいんだけどよ……その前に風呂に入らせてくれねぇか? 俺が綺麗好きなの知ってんだろ?」
ともだちにシェアしよう!